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第1回講演会「遺伝子でわかる 〜クスリが効くヒト、効かないヒト〜」

 北陸大学と北國新聞社は10月7日、金沢市文化ホールで、北國健康生きが い支援事業の北陸大学プログラム第1回講演会「遺伝子でわかる〜クスリが 効くヒト、効かないヒト〜」を開催しました。同大薬学部の小倉勤教授が講師を務め、約150人の来場者が遺伝子と体質の関係について理解を深めました。

【主催】 北陸大学、北國新聞社
【後援】 石川県医師会、金沢市医師会、石川県歯科医師会、石川県看護協会、石川県薬剤師会、石川県栄養士会
【協賛】 富士通、あおぞら薬局、アルプ、石川県予防医学協会、北國銀行、北陸銀行、のと共栄信用金庫、JA全農いしかわ、北國がん研究振興財団

代謝の良し悪しも遺伝子次第

 カエルの子はカエル 

【講師】小倉 勤(おぐら・つとむ) 北陸大卒、金大大学院修了。医学博士。国立がんセンター研究所生化学部室長、同がん治療開発部室長などを経て、現職。白山市出身、47歳
 「遺伝だから、どうしようもない」。家の中で、そう言う話が出ることがあると思います。カエルの子はカエルです。遺伝からは決して逃れら れません。病気になりやすい 遺伝子からも逃れるわけにはいかないのです
 遺伝の主役は遺伝子です。 字のごとく、お父さんとお母さんの遺言をきちんと子どもに伝えていく物質です。私たちの体は細胞によってつくられています。体重三キロの赤ちゃんの細胞は約三兆個で、成長するにつれて増殖していき、 六十キロになるとおよそ六十兆個になることがわかっていま す。増殖が止まらないところがあったとすれば、そこは、 がんということになります。
 一つ一つの細胞は、すべて同じ遺伝暗号を持ったDNA、遺伝子でできています。 一つの細胞にある二万二千個 の遺伝子のスイッチが入っているかいないかで、細胞は脳や臓器、筋肉に形を変えます。
 自分のお父さんとお母さんでは、千個に一個の割合で遺伝子の配列が違います。一方、一卵性の双子の場合はすべて同じ配列になります。では、人間とサルとではどのくらい違うのか。百個に一個、1%の割合で配列が異なります。

 遺伝子は人間の設計図 

 夢のマイホームをつくるに は、きちんとした設計図が必要です。人間で言えば、遺伝子がその設計図にあたりま す。遺伝子からタンパク質が作られて、人間という″家″ を作っていくわけです。
 お父さんかお母さんの遺伝 子に傷がついていると、おのずと子どもの遺伝子にも障害があります。その遺伝子によって発症する病気を、遺伝病と呼んでいるわけです。
 大概の病気は、生活環境の変化による遺伝子の変化で発症します。たとえば、放射線を大量に浴びて、がんができたというのが生活環境の変化による病気です。もう一つが、元々持った体質です。遺伝子の配列が0・1%違う と、ある遺伝子が強く働く人と働かない人が出てきます。 糖尿病やがんなど生活習慣病のほとんどは、生まれた後に遺伝子に傷がついて発生する のです。
 血液をとって遺伝子暗号解析装置にかけると、遺伝子の配列がわかります。どこが同じで、どこが違うのかがわかるわけです。遺伝子の暗号解読は、人に何をもたらしたか。まず、血縁関係が明らかになります。
 犯人特定にも役立ちます。 たとえば、数十年前に起こった事件で現場の血液を保存してあったとします。血液に含 まれるDNAは非常に安定した化合物ですから、その DNAをほかの罪で捕まった人のDNAと比べてみて同じなら、数十年前の事件にも関 係していたということがわかるのです。DNAの解読は、 髪の毛一本の毛根でも、口を ゆすいで出た粘膜の細胞でも可能です。
 もう一つは病気の原因究明です。どの遺伝子が変化したのかを調べるのです。病気になりやすいかどうかを予測することもできるようになりました。ある病気がある人とない人の配列を見て、違いがわかれば病気を予測することができるということです。ある薬が効くか効かないかを判別することで、薬を変えることもできます。

 がんは遺伝する? 

 「遺伝子の病気」と「遺伝する病気」とは、まったく違うというふうに考えていただきたいと思います。がんは遺伝する病気だと思っている人がいますが、ほとんどは遺伝子の病気です。遺伝子の病気 とは、生まれた後にいろいろ な化学物質が遺伝子に作用して傷がついたという状態で す。遺伝する病気とは、生まれながらに遺伝子に異常があって起こるものです。
 がんのお話をします。がんに関係する遺伝子が傷を持った状態で生まれてきた。これ は、遺伝性のがんです。この場合の治療となると、障害のある遺伝子を正常な遺伝子に 置き換えることぐらいしかあ りません。これを遺伝子治療と呼んでいます。一般の病気には、あまり遺伝子治療は行 われません。
 これまでに、遺伝性のがんが七つぐらい見つかっていま す。発生頻度はそれほど高く ありません。本当に多いの は、老化による修繕不能な変化です。正常な遺伝子が何かの拍子で変化したことで、がんなどの病気になるのです。
 遺伝子を傷つける物質を、発がん物質と呼んでいます。 発がん物質が遺伝子に影響を 及ぼすと傷がつき、一般的には修復されますが、修復がで きないくらい、たくさんの遺 伝子に傷がつけば、がんにな っていくということです。
 がんになりやすい体質と、 なりにくい体質というのは、 あります。ただ、体質という のは環境要因と遺伝要因が重 なって決まります。
 たとえば、指を切ったとすると、遺伝子が「新しい細胞 をつくれ」という指令を出し ます。司令を出す細胞を、変な名前なのですが「がん遺伝子」と呼んでいて、車で言うとアクセルの役割を担います。新しい細胞ができて、すき間が埋まったら、今度は 「増殖よ、止まれ」という指令を出さなければいけませ ん。その指令を出すのは「が ん抑制遺伝子」で、つまりブ レーキです。
 アクセルで細胞をつくって、治ったらブレーキで止める。がん遺伝子や、がん抑制 遺伝子に傷がつくと、アクセルを踏みっぱなしか、ブレー キがきかない状態になって、永遠の増殖、つまりがんにな ります。
 がんに関係する遺伝子は三百から四百種類ほどわかっています。五、六個の遺伝子に 傷がつくと、がんのような「がんもどき」になります。

 テーラーメード医療 

 アメリカでは、遺伝子の形によって薬の量を減らせという指示がなされていますが、日本ではまだ行われていないのです。さらに、たとえば血圧が高ければ、効く人にも効かない人にも同じ薬が投与されるのが現状です。遺伝子診断で薬が選択できるようになれば、効かない薬を避けて効く薬をあげようという手法が出てくる。これを「テーラーメード医療」といいいます。 遺伝子診断で一番大切なのは、倫理的な配慮です。がんになりやすいことが分かれば、生命保険の加入を断られるかもしれない。さらに、「知る権利」と「知りたくない権利」も重要になってくる。がんになりやすいと聞いただけで人生が終わったような気になる人もいるかもしれませんから。
 そういった問題がクリアされた時に、遺伝子診断が進歩するのだと思います。
 遺伝子で生きがいが決まるわけではありません。遺伝子をよく理解して、肥満の遺伝子があるなら食生活を改善してほしいということです。要は気の持ちようであり、病気にならない心がけが大事だということです。



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