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第2回フォーラム「50歳からの健康 安心できる老後に向けて」

 北陸大学と北國新聞社主催の北國健康生きがい支援事業・北陸大学プログラ
ム第1回フォーラム「50歳からの健康ー安心できる老後に向けてー」が今月2日、金沢市観光会館で開かれました。北陸大学の関連施設である映寿会みらい病院や東洋医学臨床研究所の医師、栄養士、鍼灸師らがそれぞれの立場から、老後を健康に送るための方法や生活習慣病、がん予防などについて説明しました。

【主催】 北陸大学、北國新聞社
【後援】 石川県医師会、金沢市医師会、石川県歯科医師会、石川県看護協会、石川県薬剤師会、石川県栄養士会
【協賛】 富士通、あおぞら薬局、アルプ、石川県予防医学協会、北國銀行、北陸銀行、のと共栄信用金庫、JA全農いしかわ、北國がん研究振興財団

西洋医学と東洋医学を融合 老後を元気に送る

基調講演

健康長寿社会の実現へ 漢方に強い期待

【講師】
「生活習慣病と東洋医学」
古田一史
(こうだ かずふみ)氏
映寿会みらい病院東洋医学研究所所長

日本人の死因の7割は生活習慣病

 厚生白書のデータによると、二〇〇五年に亡くなった方の数は約八十八万六千人。そのうちがんが三六・八%、心臓疾患十九・五%、脳血管疾患が一五・〇%を占めています。合わせると実に七〇%以上の方が、この三つに関連した病気で命を落としています。
 これらの病気は、日頃の生活習慣の積み重ねが原因となって発症する病気であることから、「生活習慣病」と総称されています。主な原因は、食生活の乱れ、運動不足、睡眠不足、ストレス過剰、飲酒、喫煙などが挙げられます。
 このような生活を続けていると、肥満や高脂血症、高血圧、高血糖といった体質になってしまう可能性が高いのです。肥満は外見で判断できますが、高脂血症、高血圧、高血糖は血液検査を受けなければわかりません。ですから、市や町、勤め先で実施している健康診断を進んで受けるようにしてください。

日本人の死因の7割は生活習慣病

 生活習慣病がどのようにして発症するのか、そのメカニズムを、高脂血症によって起きる血液の微小循環の障害を通して説明します。
 これはウサギを実験体にした一例ですが、コレステロールを多く含む食べ物をウサギに与え続けると、血液の流れがドロドロとなり、耳にある血管の末端、毛細血管で血液の流れが止まってしまいました。
 小さな血管の一本で血液の流れが止まるくらいは何ともないと思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、心臓をダムとすれば、毛細血管は一軒の家の水道の蛇口に相当します。各家庭に生きるために必要な水が来ないと困るのと同じように、酸素や栄養が細胞に届けられないと健康維持はできません。

漢方に動脈硬化の防止効果

 東洋医学には、血管での血液の流れが異常な状態に陥っていることを指し示す言葉があり、これを「血」と言います。東洋医学では、この血の状態から体質を改善する処置法も確立しており、生活習慣病の予防に活用できると
私は考えています。
 血とは、簡単に言えば血液の流れが悪かったり、滞っている状態だと考えてください。
 また、目の下にくまがある、顔面に色素沈着がある、口唇や歯肉、舌の色が暗く赤紫色になっている、肌がかさかさしている、静脈が皮膚に盛り上がっている、覚えのない皮下出血ができるなども、血の症状です。
 漢方では、この血の改善に桂枝茯苓丸などを用います。ドロドロの血液をサラサラにする効果が認められている漢方薬です。抗動脈硬化の作用があり、ウサギを使った実験の結果も出ています。
 AグループとBグループの二つのグループのウサギを用意し、Aグループのウサギにコレステロールだけを、Bグループのウサギにはコレステロールと桂枝茯苓丸を投与しました。すると、Aグループに比べ、Bグループの動脈硬化の発症が抑えられたのです。
 動脈硬化にも漢方は効果があるという結果を受け、生活習慣病対策に東洋医学が見直されてきています。

病気の予防こそが最良の医療

 高齢化が進むと、六十五歳以上の国民は、二〇三〇年には総人口の約三〇%、三千五百万人に達すると予測されています。
 国民の三人に一人が高齢者となるため、子供や孫の世代にかかる負担はますます重くなります。
 これから高齢化社会を迎える方々に健康に年齢を重ねてもらうことは、本人にとっても、また日本の将来にとってもプラスになります。
 厚生労働省が進める「長寿科学総合研究事業」の中で、第一線の研究者により、漢方薬や鍼灸といった東洋医学の活用についてこんな予測が立てられています。
 二〇〇八年に、脳血管障害の予防薬として漢方を応用、二〇〇九年に老人医療に対して針灸治療が認められ、食事療法や栄養指導にも漢方の理論が用いられる。二〇一一年には多臓器障害のある高齢者への漢方薬の使用が可能となる。
 東洋医学の考えに基づいた予防法や治療法が、この先、日本の医療分野で本格的に導入されていくと国が予想しているわけです。
 古い漢方の医学書にこういう言葉があります。「上工は已病を治さず未病を治す」。これは、本当の名医はすでに病気になっている人を治すのではなく、病気が発症する前に察知して予防する、という意味です。
 これは、私たち現代の医療に携わる医師の立場から考えても強くうなずけることです。病気になって後悔しないよう、先見のある予防に取り組んでください。


パネルディスカッション


パネルディスカッションのコーディネーターを務めた、映寿会みらい病院名誉院長の磨伊正義(まい・まさよし)氏
基調講演のあと引き続き行われたパネルディスカッションでは、映寿会みらい病院名誉院長の磨伊正義氏の司会で、がん治療や生活習慣病予防のための食事法、鍼灸のメカニズムなどについて話し合われました。
【出演者】
古田 一史氏(映寿会みらい病院 東洋医学研究所所長)
渡辺美智夫氏(映寿会みらい病院 診療部長)
土屋 晴生氏(映寿会みらい病院 内科部長)
西川 圭子氏(映寿会みらい病院 栄養部長)
劉  園英氏(北陸大学薬学部東洋医薬学教室 助教授)
水野 海騰氏(東洋医学臨床研究所鍼灸治療室 チーフ)
中西 博子氏(映寿会みらい病院 在宅診療部長)
■コーディネーター
磨伊 正義氏(映寿会みらい病院名誉院長)


がんとの「共存」も治療戦略の一つ
「聞いて得するがんのお話」
渡辺美智夫(わたなべ みちよ)氏

 がんの死亡者数は年間三十一万人を超え、死亡者の三人に一人はがんで亡くなっている計算になります。がんは、正常な細胞がその遺伝子に何らかの理由で傷が付き、必要以上に細胞分裂を繰り返す病気です。放っておけば、無制限に増殖し続け、さらにほかの臓器に転移して内臓のほとんどを占めるくらいに拡大して発病者の命を奪います。
 そこで、がんの治療戦略についてご紹介します。
 その一つ目は、発症の予防です。がんは生活習慣病の一つとしてとらえられており、食生活や嗜好品、環境を改めて発症の危険因子を避けることによって、発症を予防する考え方があります。二つ目は、早期発見・早期治療です。早期発見段階であれば開腹を必要としない低侵襲治療が普及してきており、その代表として、早期胃がんの内視鏡手術が知られています。
 三つ目は、開腹による外科治療。四つ目は、抗がん剤治療です。
 五つ目は、がんの周囲の環境を変えることです。がんの増殖を抑える免疫療法や、がんの栄養血管の新生を抑制する薬剤が用いられています。
 そして六つ目が、がんとの共存です。大手術や大量の抗がん剤投与を行っても、患者さんのQOL(生活の質)を損ない、結果的に生存期間を短くしてしまうことが少なくありません。がんを患者さんの生命をおびやかすくらい大きくしなければ生きていけるわけで、消滅はできないけれどがんを大きくしない休眠療法なども近年、見直されてきています。
 こうして挙げた治療戦略の中で、がんにならないための予防が最も重要です。生活習慣を改める、健康診断を欠かさない、医師とよく相談する、情報に振り回されない。こうしたことに日頃から努めてください。


活性化リンパ球療法に老化防止効果が表れる
「がんと免疫、老化防止」
土屋晴生(つちや はるお)氏

 がんの免疫療法が、外科手術、放射線、化学療法に次ぐ第四の治療法として近年、注目を集めています。
 一八九〇年代に、ウィリアム・B・コーリーというアメリカの医師が、急性の細菌感染症にかかった、がん患者の腫瘍が縮小する現象を発見し、一度は埋もれた研究成果をその娘が発展させて今日に至っています。
 体内に病原菌が侵入すると、免疫系が活性化し、病原菌を排除します。しかし、がん化した細胞に関しては「免疫寛容」といって、免疫系はがん細胞を自分の体の一部だと思い込み、攻撃しません。そこで、がんに対する免疫の活性化を引き起こすにはどうしたらいいかという研究が進められ、「活性化リンパ球療法」などの治療法が確立しました。
 活性化リンパ球療法は、放射線治療や化学療法と比べ副作用は少ないのですが、治療に時間がかかるため、増殖スピードの遅い、がんの再発防止や入院患者の一時帰宅期間の延長への活用に期待が寄せられています。
 また、活性化リンパ球療法には、がん治療という本来の目的とは違った効果が認められ注目されています。活性化リンパ球療法を受けていると、「肌が若返る」などの老化防止効果が表れるのです。科学的なメカニズムはまだ解明されていませんが、将来、老化防止法の一つとして、この療法が再生医療分野の発展に貢献できる可能性があります。


昭和50年頃を境に理想からかけ離れる
「生活習慣病と食事」
西川圭子(にしかわけいこ)氏

 食事は日常的に繰り返されるため、その重要性を忘れがちです。皆さんは、人がその一生の中で何度の食事をするかご存知でしょうか。男性が約七十九歳の平均寿命を生きると八万四千三百十五回、女性が約八十五歳の平均寿命を生きると九万一千九百八十回の食事をすると計算できます。膨大な数です。食事が健康に及ぼす影響は計り知れないものがあると感じられます。
 昭和五十年ごろ、日本人の食生活は、エネルギー、たんぱく質、脂質ともほぼ満足すべき摂取量になり、「日本型食生活」という理想的な食事内容を実現しました。
 しかし、欧米文化の浸透とともに、コンビニエンスストアやファミリーレストラン、ファーストフード店などが街に立ち並ぶようになり、家での食事が減って外食する機会が多くなりました。また、調理済みの惣菜や弁当を買ってきて、家で食べる「中食」も習慣化し、摂取する栄養の偏りが顕在化しています。
 平成十六年に実施された国民栄養調査によると、理想的だった昭和五十年ごろの食事と比べ、エネルギー摂取量は約三百キロカロリー減少しているにもかかわらず脂肪エネルギー比率は25・3%と増加しました。データが示す通りの食生活を続ければ、生活習慣病のリスクは高まります。
 「食」の字は「人を良くする」と書きます。「食事」はまさに「人を良くする事」なのです。興味本位に仕立てられたテレビの情報番組などに踊らされることのないよう、そうした情報とは一定の距離を置いて、まんべんなくいろんな食材を食べることを心掛けてください。


心身を養う「食養生」健康維持に生かす
「健康における食の大切さ〜漢方の食養生〜」
劉 園英(りゅう えんえい)氏

 日本人の平均寿命は世界トップクラス、しかし生活習慣病の発症も世界トップクラスと言われています。
 原因が食生活の乱れにあるのは明白です。食は健康の源、命の源です。食の改善で生活習慣病を防ぎ、健康を維持することも可能になります。
 漢方には「食養生」という、食べることで心身を養い、病気の予防や体調の管理をする考えがあり、その特色は、個人の体質や季節に合った食事に重きを置いている点にあります。
 体質に関しては、年齢や性別に応じて、暑がりや寒がり、痩せている、太っているなどの体質類型に合う適切な食材を選ぶようにします。
 季節に関しては、旬の食べ物を食べる、食べ物の性質を利用する、といった考えがあります。春には「肝」を養う、夏には「心」(心臓)の負担を軽くする、秋には「肺」を潤す、冬には「腎」を強める食材を選んで食べるのです。
 このほか、過不足のない食事量、目安としては腹八分目で我慢をすることや、甘味、酸味などの偏った味のものばかりを食べるのではなく、五味すべてをバランスよく食べることが大切です。好きなものばかりを食べる、この食べ物は嫌いだから食べないといった自分に都合のいいことは習慣になりがちです。「食」から健康を見つめ直してください。


2000年の歴史を誇る鍼灸に欧米でも強い期待
「『自然美』への追求ー鍼灸の魅力」
水野海騰(みずの かいとう)氏

 鍼灸は細い針やお灸を用いて、体の表面のつぼを刺激することで、人に備わっている回復力を増進し、病気の治療や健康維持、皮膚老化の防止に役立てます。
 中国では、「顔は健康かどうかの天気予報である」と表現し、心身ともに健康な人は「神」のある表情をし、美しい「自然美」を放つと言われています。鍼灸は、一人ひとりの症状や体質に合った処置をして心身を健康にし、人が本来持っている自然な美しさ、「自然美」を実現するのです。
 鍼灸は、現存する最古の医学書「黄帝内経・霊枢」にその記載が見られることから、約二千年の歴史を有しています。中国や東南アジアでは、日常的に西洋医学と併用されており、欧米でも、生活習慣病の予防や体質改善、不眠、冷や汗など病気の二次的影響の解消に鍼灸や東洋医学が活用されはじめています。
 一方、日本でも明治の頃までは人々の健康維持、疾病の治療、長生不老の目的で盛んに活用されてきました。現代でも、鍼灸の効果が見直されてきてはいますが、西洋医学と医療体系が異なるため、理解が遅れています。しかし、認知は広まっており、日本の医療現場でも近いうちに、ふつうに鍼灸を目にするようになると考えています。


信頼できる主治医確保 元気なうちから備えを
「いつまでも自宅で暮らすために」
中西博子(なかにし ひろこ)氏

 一九九二年、医療法の改正によって、在宅医療が法的根拠を持つようになりました。自己注射など限られたものだけが在宅医療で認められていましたが、現在では在宅酸素療法、在宅悪性腫瘍鎮痛、在宅人工呼吸、化学療法など十二種類の医療が自宅で受けられるようになっています。
 近年行われたあるアンケート調査によると、「がんに侵された場合、どこで最期を迎えたいか」という質問に対し、89%の人が「自宅で」と答えています。しかし、二〇〇四年の死亡統計によると、実際に自宅で亡くなったがん患者は、全体のわずか5・8%でした。医療的な環境の不備や家庭の事情もありますが、緊急事態を考えた時の不安な気持ちが、自宅ではなく病院を選んでしまう一番の理由のようですし、医信頼できる主治医確保
元気なうちから備えを療を提供する側にも同様の意識が働いています。
 末期がん患者の在宅医療である在宅ホスピスは、患者さんや家族を、主治医、訪問看護師、薬剤師、ケアマネジャー、ヘルパー、管理栄養士、地域や友人らが協力して支援すれば、実現できるものです。みんなが一丸となって支えてくれるという安心感があると、深夜、患者さんや家族から病院に不安を訴える電話がかかることはめったにありません。
 いつまでも自宅で暮らすために、信頼できる主治医を見つける、医療保険や介護保険制度、地域の公共サービスについて情報収集しておく、家族に自分の最期についての意思を伝えておくなど、今からでもできることはたくさんあります。
 安心できる老後に向けて、元気なうちから備えてください。



無料鍼灸体験も好評
 フォーラムの別会場では、6つの特設ベッドを用意して無料の鍼灸体験を実施し、大勢の人が訪れました。東洋医学臨床研究所のスタッフが来場者の症状を聞きながら肩や足に鍼を打ち、大好評でした。



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