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大学プログラム

北國健康生きがい支援事業
金沢医科大学プログラム

第3回フォーラム「睡眠障害〜現代人の悩み その解消法〜」

 「夜ぐっすり眠れない」「日中、強い眠気が襲ってくる」。現代人の多くが頭を悩ませる病気の一つに、「睡眠障害」があります。金沢医科大学と北國新聞社は3月3日、北國健康生きがい支援事業・金沢医科大学プログラム「睡眠障害〜現代人の悩み その解消法〜」と題した健康フォーラムを北國新聞会館で開催しました。「睡眠時無呼吸症候群」を中心に、その原因と治療法などを紹介し、聴講者の関心を集めました。

【主催】 金沢医科大学、北國新聞社
【後援】 石川県医師会、金沢市医師会、石川県歯科医師会、石川県看護協会、石川県薬剤師会、石川県栄養士会
【協賛】 富士通、大鵬薬品工業、あおぞら薬局、アルプ、石川県予防医学協会、北國銀行、北陸銀行、みずほ銀行、三井アセット信託銀行、のと共栄信用金庫、JA全農いしかわ、第一生命、北國がん研究振興財団

”無呼吸”が危ない いびきと肥満は要注意


テーマ「睡眠時無呼吸症候群という病気について」
居眠り運転が問題
事故起こす確率7倍

栂 博久(とが ひろひさ)氏
金沢医科大学呼吸機能治療学(呼吸器内科学)教授

”やせ”も安心は禁物

1時間に5回以上で無呼吸症候群

 睡眠障害の中で、最も多いのが、就寝中に何度も息が止まる睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
 十秒以上続く無呼吸状態が一時間に五回以上起きるとSASと診断され、五から十四回が軽症、十五から二十九回が中等症、三十回以上が重症に分類されます。重症の場合、二分に一回は呼吸が停止している状態となり、一回の無呼吸が一分以上、続くケースも珍しくありません。
 SASが起きる原因は、70%から80%の確率で、上気道(鼻腔・咽頭・喉頭など)の閉塞によるものです。上気道は空気の通り道の役割を果たしていて、この部分が狭くなったり、閉じたりすることでいびきが出ます。ですから、毎日のように大きないびきをかく人は、呼吸の通り道がふさがっている危険性が高く、SASを疑ってみた方がいいでしょう。

日中に強烈な眠気が襲う

 
この病気の怖いところは、睡眠中の酸素不足から頭が覚める状態が続いて熟睡できず、その反動で日中に強烈な眠気が襲ってくる点です。眠気に耐えきれず、眠りに落ちることもあります(図1)。
 このSASで最近問題となっているのが、「居眠り運転」です。四年ほど前、山陽新幹線の運転士が居眠りをし、岡山駅で緊急停止する事故がありました。あわや大惨事というこの事故の原因は、その後の調査で、運転士のSASによるものということが分かりました。自動車運転者が五年間で事故を起こす確率は百人中およそ六人であるのに対して、SASにかかっている人は実にその七倍の約四十人に上ります。
 SASかどうかを簡単に判定する方法として、エプワース眠気尺度(図2)があるので、ぜひチェックしてみてください。また、「いびきのパターンが変わる」「睡眠中によく体を動かす」「夜中に何度も目が覚め、のどが渇く」「日中の眠気がひどい」のうち二つ以上、該当する方も危険信号です。
 ほかにも、SASになると眠れないストレスでイライラし、高血圧や高脂血症、不整脈などを併発し、心臓病や卒中のリスクも高まります。睡眠中の突然死でも、SASが多いと言われています。

石川県民の5万人以上がSAS

 このように多くの危険を招くSASですが、症状の多くが睡眠中に現れるため、気づかないまま過ごす人が少なくありません。ここがSASの怖さで、推定では日本人の4%から6%がSASを罹患し、その半数近くが重症と言われています。
 つまり、石川県内でも五万人以上のSAS患者がおり、そのうち二、三万人は重度の無呼吸に悩まされているという計算になります。この比率は決して無視できるものでなく、SASはかなり一般的な病気と言えるでしょう。
 働き盛りの五十代の男性に多いのも特徴で、これには肥満が大きく関係しています。のどの気道が脂肪で狭くなり、就寝中、緊張がゆるむことで閉塞してしまうのです。
 肥満度は、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で表される体格指数(BMI)で調べられます。18・5未満がやせ型、18・5から25未満が標準、25から30未満が軽度の肥満、30以上が高度肥満になります。肥満と判定された方は、生活習慣病の予防のためにも、減量をおすすめします。肥満の解消でSASはかなり改善できます。逆に、リバウンドを起こすと、症状は元に戻るので注意が必要です。
 ただ、やせているからと言って、「自分はSASにならない」と安心するのも誤りです。日本人は、目が大きく顔の彫りが深い縄文人タイプと、細面の弥生人タイプに分けることができます。のどが太い縄文系に対して、弥生系はのどが細く、やせている人でもSASになる危険があるからです。SASのサインを見逃さないようにすることが大切です。


テーマ「睡眠時無呼吸症候群 耳鼻科の立場より」
装具や外科手術
閉塞状態に応じて治療

糸井(いとい) あや氏
金沢医科大学感覚機能病態学(耳鼻咽頭科学)助手

一緒に眠る家族と来院を

 SASでもっとも多い閉塞型無呼吸症候群(OSAS)の診察と治療法について紹介します。空気が鼻と口から入り、のどを通っていく過程で、気道がふさがってしまうOSASでは、多くの原因が考えられます。例えば、扁桃腺や口蓋垂(のどちんこ)の肥大、鼻の奥の粘膜がはれるアデノイドなどがあります(図3)。
 閉塞パターンと重症度で治療法が異なるため、診察や検査でOSASの状態を念入りに突き止めます。金沢医科大学病院では、問診→診察→スクリーニング→終夜睡眠検査→治療の順番で診療を行います。
 問診では、いびきの頻度や日中の眠気、睡眠障害以外の病気の有無などを尋ねるチェックシートに記入してもらい、本人から詳細な症状を聞きます。睡眠中の様子を把握する必要があるので、できれば同じ寝室で寝る家族と来院されることをおすすめします。
 次に、鼻の通り道がどうなっているか鼻腔通気度検査をして、鼻の通り具合がどの程度かを調べます。さらに、MRIと鼻から挿入した内視鏡で、口蓋垂や気道などの形状を確認して閉塞部位を特定します。
 OSASの原因となっている個所を見つけた後は、重症度を測定するためにスクリーニングと終夜睡眠検査を実施します。スクリーニングは自宅でできる簡易型睡眠モニター検査のことで、鼻や胸部、腹部に付けたセンサーで就寝中の呼吸状態を探ります。
 終夜睡眠検査では、スクリーニングの結果をもとに、病院に実際に一泊してもらい、脳波や心電図、呼吸状態から正確な重症度を判定します。これらの診断結果をもとに、患者さん一人ひとりに合った治療を開始します。

鼻に空気マスク気道を広げる

 治療法には、気道を確保するための装具の取り付けや外科的手術など、数多くの方法があります(図4)。一時間あたり五回から二十回までの比較的軽度のOSASでは、義歯を入れるように口の中に装着する口腔内装具を主に利用します。下あごや舌を前方に引き出し、気道の閉塞を防ぐのです。
 一時間に二十回以上、無呼吸が起きる重度の方には、鼻にマスクを付けるCPAPという治療法が一般的です。圧力をかけた空気を鼻から流し、閉塞した気道を広げます。効果は非常に大きく、取り付けた日から熟睡でき、朝もすっ
きりと目覚められます。
 外科的手術の種類も豊富で、例えば、扁桃腺の肥大による中等症以下で、さらに四十代以下の患者さんの場合は、扁桃腺の除去手術を行います。このほか、口蓋垂周辺に電極をあてて組織を縮めたり、鼻を矯正して空気の通りを良くするなどの方法もあります。
 ただ、肥満が問題のケースでは手術が難しく、生活習慣の改善指導によって、一、二年間かけて減量する方法をとります。どうしても、体重を落とせない方には、一カ月で10キロ近く減らす入院プログラムもあります。

成長や発達に悪影響も

 OSASは大人特有の病気ではなく、子どもでも発症します。金沢医科大学病院でもこの五年間で、百人以上を診療しています。小児の睡眠障害は、大人と違って成長や発達障害にもかかわるだけに、速やかな診療が大切です。
 症状は、大人と同様にいびきをかくほか、「朝起きられない」「日中、鼻で息ができず口を開けている」「食欲がなくやせている」「落ち着きがない」などが挙げられます。重症な所見として漏斗胸といって上気道に空気が入らず、胸がへこみ、ろっ骨の間がくぼんでいる子どももいます(図5)。
 加えて、小児のOSASに多いアデノイドと扁桃腺が肥大している子どもほど、やせている傾向にあります。もちろん、子どもの場合も手術などでOSASの原因個所を治療すれば、順調に回復します。


テーマ「不眠・過眠・昼夜逆転」
不安の解消、投薬
生活指導で改善

堀 有行(ほり ありゆき)氏
金沢医科大学医学教育学助教授

睡眠日誌で原因探る

眠りの悩みは人それぞれ

 睡眠障害に悩む方々の相談にはいろいろな内容があります。特に多く寄せられるのが、「眠りたいのに眠れない」「途中で何度も目が覚める」「ぐっすり眠れない」などの症状に悩まされる不眠症です。
 皆さんの誤解を解きたいと思います。最近よく、テレビなどで「五人に一人は不眠症」ということを聞きます。しかし、それは間違いです。誰でも布団に入って、なかなか寝つけない経験をお持ちでしょう。だからといって、それが即座に不眠症を疑う理由にはなりません。
 不眠症とは、週三日以上眠れない状態が一カ月以上続くことを指します。さらに、その状況でも、調子がいい人は不眠症に当てはまりません。寝れないことに不満を感じ、体調のすぐれない人が不眠症なのです。
 不眠症の診療は、不眠のタイプをつかむことから始まります。寝つきが悪いのか、途中で起きるのかといった症状はもちろん、不眠症を引き起こす病気はないか、お茶が好きかなど細かく探ります。精神的な影響が原因のケースも少なくありません。
 次に「寝ること」に対する考え方を指導していきます。その一つが、刺激コントロール法です。具体的には、「眠くないときに布団に入って無理に寝ようとしない」「布団に入って本を読んだり、テレビを見たりしない」などです。これらの行動は、布団を寝る場所として、しっかり認識するために行います。
 睡眠時間制限療法もあります。「六時間たったら、布団から出る」といったルールを決め、眠る習慣をつけていく方法です。一方で、寝ることにこだわるあまり、昼間から睡眠を過度に心配してしまう方には、その気持ちをやわらげるように指導します。

睡眠薬服用の目安適量を4〜6週間

 それでも不眠症が改善されない場合は、睡眠薬などの薬物療法へと移行します。睡眠薬にも、寝つきをよくしたり、作用時間が長かったり、不安をやわらげたりなど、いろいろな薬があり、不眠の状態や特徴に合ったものを調合します。
 睡眠薬に関しては、長期間、服用すると危険な副作用があると心配される方も多いようですが、そのような物質は入っていません。ただ、副作用との因果関係を実証するデータも整っておらず、自分に適した薬の量を守って使うことが大切です。服用の目安は四週から六週間。もちろん、医師の診断によっては、それ以上、服用することもあります。

寝足りない過眠症昼夜逆転の障害も

 眠れずに悩む不眠症に対して、どれだけ寝ても寝足りないのが過眠症です。以前、診療した男性は、感情的になると体の力が抜けるナルコレプシーという過眠症でした。
 ナルコレプシーは生活指導や薬によって、ほぼ完治する病気です。けれども、男性は過眠症という病気を知らず、長い間、眠くなる体質だと思い込んでいたそうです。生まれ持ったものだとあきらめずに、気になる方は、病院に相談に訪れてください。
 昼夜が逆転して夜眠れず、朝起きられない睡眠障害もあります。寝る時間が一日一日ずれていき、一カ月で一回りする非二十四時間睡眠覚醒症候群などが知られており、体内のリズムが狂う病気です。非二十四時間睡眠覚醒症候群も、生活習慣の改善と投薬で回復に向かいます。
 このとき、昼夜逆転の睡眠障害の細かなデータをとるために、眠っていた時間帯や食事・服薬の時刻などを一カ月にわたって記録する睡眠日誌(図3)を付けることがあります。昼夜逆転以外の睡眠障害でも、睡眠日誌から原因が見えてくることが期待できます。ぜひ試してみてください。


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