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北國健康生きがい支援機構
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大学プログラム

北國健康生きがい支援事業「医・食・寿を学ぶ」
金沢大学プログラム

第1回フォーラム『肥満は万病の元』
 2006/07/20 会場:石川県文教会館

怖い内臓脂肪。肥満の予防と解消で健康維持を

 過食や運動不足の積み重ねにより内臓脂肪が蓄積し、動脈硬化や心筋梗塞に至る可能性が高まった状態を「メタボリックシンドローム」と言います。金沢大学と北國新聞社は先月22日、金沢市の石川県文教会館で、金沢大学プログラムとして「肥満は万病の元」と題したフォーラムを開催しました。約300人の来場者が、専門家による講演やパネルディスカッションを通して「メタボリックシンドローム」の危険性と予防法を学びました。

[主催]金沢大学、北國新聞社 [協力]金沢大学大学院医学系研究科、金沢大学医学部附属病院
[後援]石川県医師会、金沢市医師会、石川県歯科医師会、石川県看護協会、石川県薬剤師会



【第1部】基調講演

講師:小林 淳二(こばやし・じゅんじ)さん
金沢大学医学部を卒業後、千葉大学附属病院などを経て、アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校、米国衛生研究所へ留学し、博士号を取得。現在は、日本内科学会、糖尿病学会、肥満学会などに所属し、動脈硬化や肥満治療を専門に研究を進めている。

「ウエストで寿命が分かる? 内臓脂肪と生活習慣病」
男性85センチ、女性は90センチ以上、ウエストには要注意

メタポリックシンドロームは"死の四重奏"
 皆さんはこんな言葉を聞いたことがないでしょうか。「ベルトの穴が一つ増えると寿命が一年縮む。長生きしたかったら、まずウエストを細くすることだ」。
 これは、食生活の乱れや運動不足が原因でウエスト周りが大きくなっている人は深刻な病気を発症する可能性が高いことを意味しています。内臓脂肪の蓄積や血糖や血圧、血中脂質の上昇などを原因に、心筋梗塞などの病気が引き起こされやすくなった状態を「メタボリックシンドローム」と言い、医師など専門家の間では”死の四重奏”とも呼ばれていました。
 金沢市が実施するすこやか健診のデータによると、男性の五人に一人がメタボリックシンドロームと判定されており、決して珍しいものではありません。
 従来は、健康診断などで高血圧、高血糖気味であっても、治療を要しない「要指導」レベルだと余り重く受け止められることはありませんでした。
 しかし、血糖・血圧・脂質などの個々の診断値は深刻でなくても、それらが複合することで心筋梗塞などの危険性が高まることが、メタボリックシンドロームの症名とともに今、知られるようになっています。

心筋梗塞の発症リスクが2倍に
 
メタボリックシンドロームの人は、心筋梗塞の発生率が、そうでない人に比べ二倍以上になります。だから、「高血圧、高血糖だけど、治療を受けるほどじゃないから大丈夫」と安心してはいけません。潜在的なリスクを背負っていることを認識し、特に肥満には日々気をつけることが重要です。
 厚生労働省の二〇〇〇年度国民栄養調査のデータによると、成人男性の全世代で肥満が年々増えており、特におなか周りが気になる男性諸氏は、メタボリックシンドロームを疑ってみる必要があります。
 メタボリックシンドロームの診断基準は次の通りです。内臓脂肪の蓄積の目安となるウエストが男性で八十五センチ以上、女性で九十センチ以上。加えて、血糖、血圧、血中脂質の三項目のうち二つ以上で基準を超える値を示す-。
 もっとも、メタボリックシンドローム判定の重要な指針である「肥満」に対し、多くの人が危機感を持っていないのが実情です。二〇〇〇年に総理府が行った世論調査によると、生活習慣病に対する感じ方として、ガンや脳卒中、心筋梗塞については八割以上の人が「非常に恐い病気」と答えていたのに対し、肥満について同様にとらえていた人は三割以下という結果が残っています。

「3C」が沖縄の長寿を阻害
 そうした中、男女とも長寿日本一を誇っていた沖縄県で、ある異変がありました。
 沖縄県民の男性の平均寿命が二〇〇〇年に突如、都道府県別で二十六位にまでランクダウンしました。アメリカの占領下で育った戦後生まれの世代の死亡率が全国平均を上回ったからです。とりわけ三〇代以上で糖尿病、肝臓病、心臓病で死亡する人が多く、その原因は「3C」にあると言われています。
 一つ目のCは「コレステロール」です。食生活が欧米型に変化し、コレステロールを上げる食品をよく摂取するようになった。二つ目のCは「シガレット」。タバコを吸うと、さまざまな病気を引き起こす危険度が高まります。三つ目のCは「カー」。車に乗る機会が多く運動不足になったためです。
 こうしたライフスタイルの変化により引き起こされる生活習慣病やメタボリックシンドロームを予防する上で重要なのは、動脈硬化の誘因となる内臓脂肪を減らすことです。内臓脂肪は腸や胃の周りについている脂肪で、筋肉の内側にあり、おなかをつまんで分かるのは皮下脂肪です。この内臓脂肪を減らすには生活習慣の改善が欠かせません。
 二〇〇五年に宝達志水町が、メタボリックシンドロームと診断された十名の方を対象に食事療法と運動療法を基本にした保健指導プログラムを実施したところ、三カ月後には全員メタボリックシンドロームではなくなりました。生活習慣の改善が非常によい影響を与えることを裏付けるデータだと思います。

毎日1万歩のウォーキングを
 
内臓脂肪は皮下脂肪とは違い、つきやすく落ちやすい点が特徴です。まずは五%体重を減らすことを目標にしてみましょう。
 内臓脂肪を減らしやすい有酸素運動の一つであるウオーキングは、生活習慣病対策の基本です。明日からぜひ歩数計を携帯し、一日の歩数を記録してみてはどうでしょうか。
 毎日一万歩の運動を続ければ、体重の減少はわずかでも、体質は大幅に改善されます。
 また、朝の散歩など生活習慣の改善が「長続きしない」「くじけてしまう」という方もいらっしゃいますが、習慣が崩れかかって一日休んでも、そのままあきらめずに次の日に再スタートすることが大切です。まずは、できることから始めましょう。

メタボリックシンドロームの診断基準
内臓脂肪蓄積
腹囲 男性85センチ以上 女性90センチ以上
※腹囲は立位、軽呼気時、へそレベルで測定する。これに加え、以下のうち2項目以上が該当する腹囲男性85センチ以上女性90センチ以上
(1)リポ蛋白(たんぱく)異常
中性脂肪 150mg/dl以上、低HDLコレステロール40mg/dl未満のいずれか、または両方
(2)高血圧値
収縮期 130mmHg以上、拡張期85mmHg以上のいずれか、または両方
(3)高血糖
空腹時血糖 110mg/dl以上




【第2部】パネルディスカッション

コーディネーター
横田 幸子さん
(キャスター)
パネリスト
小林 淳二
さん
金沢大学大学院
医学系研究科 特任教授
パネリスト
黒川 千佳さん
金沢大学医学部附属病院
管理栄養士
パネリスト
米田 由美さん
金沢大学医学部附属病院
理学療法士
パネリスト
土本 千春さん
金沢大学医学部附属病院
看護師・糖尿病療法指導士

すぐに結果を求めず、気長に生活改善 ▼ 小林さん
食事の量、回数、内容のバランス大切 ▼ 黒川さん
筋肉をつけカロリー燃えやすい体に ▼ 米田さん
生活習慣を変えられるのは自分自身 ▼ 土本さん

饅頭1個が160キロカロリー

横田パネルディスカッションでは、どのような生活を送れば肥満の予防や、改善ができるかを考えます。
黒川まず、食生活を変える必要がありますね。「これを食べればやせる」という都合のいい食品はないので、日々の食事の中で改善すべき点を見つけ、直していくことが大切です。
米田運動は、肥満を緩和するだけでなく、血糖値・血圧を下げるなどの効果があります。激しすぎる運動は体の負担になりますから、体力や体の状態に合った運動を心がけるようにしましょう。
横田カロリー計算をするのが面倒で長続きしないという人もいます。手軽にできる食事の制限方法はありませんか。
黒川カロリーが高そうな料理を一品減らし、代わりに野菜料理を一品加えるだけで、肥満予防の効果が期待できます。さらに、間食をとらないのも大事です。例えば、お饅頭一個だけでも約百六十キロカロリーあります。毎日食べている甘いものを控えるようにすれば、一カ月で約一キロ体重を減らすことにつながります。
米田ちなみに、お饅頭一個に相当するエネルギーを消費するには、約五十分ものウオーキングが必要になるんですよ。
横田五十分ですか。食べるのは一瞬なのに、カロリーを消費するにはそれほど時間がかかるんですね。
米田はい。また、運動後の水分補給にも注意が必要です。ビールはジョッキ一杯で約百六十キロカロリー、お饅頭一個とほぼ同じなので、せっかくの運動が帳消しになることがあります。高カロリーのスポーツドリンクもできるだけ飲まないようにしましょう。
小林もちろん、高カロリーの食品も控えてください。食生活の欧米化が進み、皆さん、動物性脂肪を頻繁に摂取するようになっています。動物性脂肪の取り過ぎは、肥満や高脂血症を誘発します。乳製品を控えて、牛乳を低脂肪乳に切り替えるだけでも、肥満の予防につながります。
横田肥満になってしまった場合に効果的な運動は何でしょうか。
米田ウオーキングや水泳、自転車こぎなどの有酸素運動は内臓脂肪を効率的に燃焼できます。ただし、運動の強さは軽く息が弾んで、汗がじわじわと出てくる程度にとどめてください。実は、言葉が発せられないほどの激しい運動は、内臓脂肪を燃やしにくいのです。ウオーキングなどの軽い運動を二十分以上続けて、ようやく内臓脂肪がエネルギーに使われだします。
横田お年を召した方には関節痛や腰痛を抱えていらっしゃる方が多いでしょうから、運動する習慣がない人は、少しずつ体を慣らせばいいですね。
米田そうです。最初は数分でもいいので、無理をせず、毎日続けて体を動かすようにしましょう。毎日の運動で筋肉がつき、だんだんと長時間、体を動かせるようになります。例えば、脚を肩幅くらいに広げて、ひざが直角になるくらいに体を上下させるだけで、脚の運動になりますよ。
横田運動として、手軽なウオーキングをする人が多いですが、具体的にはどんな効果があるのでしょうか。
米田脚の筋肉を鍛えられ、基礎代謝が向上して消費するカロリーが増えます。かなりの人が、運動でカロリーをたくさん燃焼できると思いがちですが、一日の消費量の二.三割に過ぎず、およそ七割は基礎代謝によって使われます。基礎代謝は筋肉の量によって増減し、寝ているときにも行われています。そのため、大腿筋など大きな筋肉が集まっている脚を鍛えれば、効率的にカロリーを消費できますよ。
小林脚に筋肉をつけるために、例えば、車で移動する際も、目的地から少し離れた駐車場に車を置くなどして、普段から歩く距離を増やすようにするといいですね。

禁煙は内臓脂肪を減らす

横田土本さんは代表的な生活習慣病の一つである糖尿病のスペシャリストとして、多くの入院患者の治療に携わっていますが、糖尿病で入院してくる患者さんの傾向を教えてください。
土本糖尿病は体内で徐々に進行する病気で、自覚症状が出たころには治療が必要なくらいに悪化している場合が多い。でも、患者さんの多くは「自分が糖尿病にかかるとは思ってもみなかった」と言います。
横田他人事と思わないようにすれば、予防につながりますね。
土本そうです。それと、糖尿病は入院してもすぐに完治する病気ではありませんから、常に病気を抱えていることを意識することも大切です。三週間入院して規則正しい生活を送っても、退院後はすぐ元通りの暮らしに戻り、再発してしまう患者さんもいます。普段から、食事のバランスを考えるほか、体を動かすようにして、自分の生活習慣を改善する努力が必要です。
横田入院は、あくまで日常生活を改善するきっかけにすぎないのですね。どのような改善指導をされているんですか。
土本家庭によって、料理の味付けや食べる量など、食事の内容が違うので、まず普段の食生活を教えてもらい、その上で改めるべき点を話し合います。生活改善のためには、家族の協力が必要なので、一緒に取り組んでいくようにしましょう。
横田なるほど。家族の励ましも大切なんですね。
土本ただし、食生活を改めたり、運動を心がけても、すぐに糖尿病が完治したり、体重が減ってウエストが細くなるわけではありません。結果が出ないからといってすぐやめるのでなく、毎日健康的な生活を送ることが重要なのです。
小林ウエストがあまり変わらなくても、体内の内臓脂肪は確実に減っています。めげずにがんばりましょう。年をとると体が老化し、どうしても身体機能が低下します。その低くなった機能を補うためにも、栄養バランスのとれた食事と適度な運動は欠かせないのです。
横田ほかにも、気をつけた方がいいことはありますか。
小林喫煙は内臓脂肪を蓄積させる原因の一つです。「タバコをやめると太る」と抵抗する人がいますが、重要なのは内臓脂肪の減少です。喫煙者の方はぜひ禁煙をおすすめします。

まずは体重5%減少を目標に

横田最後にまとめとして、皆さんからアドバイスを一言ずつお願いします。
黒川ご自宅の毎日の食事をチェックしてみてください。適度な「量」、ちょうどいい「回数」、野菜が豊富な「内容」の三つのバランスを意識しながら、日々の食事をとってほしいと思います。
米田カロリーを消費しやすい体にするため、軽い筋力トレーニングをして、少しずつ筋肉をつけるようにしましょう。
土本栄養バランスのとれた食事と適度な運動を両立して続けていくのは大変ですが、健康のためには一番重要なことです。自分の生活習慣を変えられるのは自分だけです。強い意志を持って取り組んでほしいと思います。
小林減量の目標値を高く掲げると、逆に長持ちせず体重ダウンに失敗しやすくなりますから、まずは体重五%減を目指しましょう。また、すぐに結果を求めず、「継続は力なり」と考え、気長に取り組めば、血糖、血圧、脂質の改善に大きな効果が期待できます。
横田皆さん、ありがとうございました。肥満予防・改善にすぐに役立つ実践的な知識をお聞きすることができました。肥満を予防するのは、今からでも決して遅くありません。今日から早速役立ててください。 (文中敬称略)



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