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大学プログラム

北國健康生きがい支援事業
金沢大学プログラム

第2回フォーラム『やっぱり肝臓が肝心だ!』
 開催日:2006/09/30(土) 会場:金沢大学 十全講堂

脂肪肝に注意食事と運動で改善を

 内臓の中でも肝臓は様々な病気の要となり、最近話題のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)にも深く関わっていることが分かってきています。金沢大学と北國新聞社は9月30日、金沢大学の十全講堂で、金沢大学プログラムとして「やっぱり肝臓が肝心だ!」と題したフォーラムを開催しました。約200人の来場者が、基調講演や公開診断を通じて、肝機能の仕組みや健康維持のための心構えを学びました。

【主催】 金沢大学、北國新聞社
【後援】 石川県医師会、金沢市医師会、石川県歯科医師会、石川県看護協会、石川県薬剤師会、石川県栄養士会
【協賛】 富士通、あおぞら薬局、アルプ、石川県予防医学協会、北國銀行、北陸銀行、のと共栄信用金庫、JA全農いしかわ、北國がん研究振興財団

基調講演【1】

「カラダの化学工場」
金子 周一氏 かねこ・しゅういち 金沢大学大学院医学系研究科教授・医学部長
症状が表に出ない"沈黙の臓器"

再生力に富んでいる

縛られたプロメテ
ウス(ルーベンス)
 ここにバロック期の画家ルーベンスが描いた絵があります。ワシがつついている場所が肝臓です。ちょうど右のわき腹の上にあります。ゼウスが怒ってプロメテウスに罰を与えているというギリシャ神話に基づく絵です。プロメテウスは岩山につながれていて、日中にワシが飛んできて肝臓を食べられてしまう。ところが、夜になると肝臓はまた元通りに戻って、次の日もまた、このワシが肝臓を食べに来る。来る日も来る日も肝臓を食べられるという罰を与えられたということで有名な神話です。
 それほど肝臓は再生力に富む臓器だということです。最近、外科手術をしたり、臓器移植をしたりして分かるようになってきました。どうしてギリシャ神話の時代から、肝臓が再生力に富んだ臓器だと分かったのかは不思議です。
 中国や日本で肝臓はどう言われてきたか。肝臓を肝と呼んで使う言葉がいっぱいあります。肝を焼く、冷やす、試す。肝要という言葉もあります。私たちは肝臓がいろいろな病気の要であると考えています。

日本酒1合に3時間かかる

 食べ物から吸収した栄養を全身に送るのが肝臓の仕事です。細胞と細胞のすき間を血液が流れていく間に、食べた栄養が分解されたり、作られたり、薬などを解毒したり、有害物質を元に戻したり、場合によってはエネルギーを蓄えたりもします。肝臓はこういう化学工場の仕事をしています。
金子 周一氏
 アルコールは胃腸で吸収します。お酒やビールを飲んだら、おなかにしみ、肝臓に行きます。肝臓は一回で完全に化学工場の働きをするわけではなく、くるくる全身を何度か回っているうちに、最終的にアルコールを水と二酸化炭素に変えます。
 このごろ、飲酒運転が目立ちますが、例えば、体重六十キロの人が日本酒一合を三十分で飲んだとすると、肝臓は大抵、三時間ぐらいかかって化学工場の働きをします。二合飲むと、六時間かかります。だから、前の晩にたくさん飲んで、朝、飲酒運転で捕まったというケースがありますが、当然です。肝臓は、寝ていようが起きていようが、化学工場の働きを一定の能力でやります。
 個人によって能力は違いますが、たくさん飲み過ぎると工場は壊れます。脂肪肝になったり、肝炎になったり、肝硬変になったり、肝がんになったりします。今、日本では年間約百万人の人が亡くなりますが、肝臓の病気で亡くなるのはおよそ五万人です。二十人に一人は、肝臓が理由で亡く
なるわけです。
 肝臓は沈黙の臓器と言われます。つまり、肝臓を悪くしても、症状が表に出るのは、よほど悪くなったときです。心臓が悪ければ、心臓はバクバク言います。肺が悪かったら息ができません。ところが、肝臓は格好が相当変わるほど悪くならないと症状が出ません。症状にも出ない、外から見ても分からない人は、例えばレントゲンや心電図をとるとか、血液を採る、あるいはCTをすると病気が分
かります。
 体の所見で分からないのかとよく言われますが、手のひらを見ると分かります。全体的に赤くて、真ん中は白い。これは肝硬変や慢性肝炎の進んだ人の手です。お酒を飲んで鼻の頭が赤いなどというのは有名ですが、実はおへそより上のところに血管が浮き出て見えるのが病気であります。くも状血管腫と言って、肝臓が悪い印です。こういったことは、ひどく壊れたときにしか出ません。化学工場が処理できないほどのアルコールが入ったら肝臓が壊れるということです。

人口の3割近くが脂肪肝?
 では、処理できないほどの食べ物が入ったらどうなるか。ダチョウに無理やり食べさせてフォアグラを作ります。これは脂肪肝です。人間も食べ過ぎると脂肪肝になります。今、人口の三割近くに脂肪肝があるかもしれないと言われており、日本でも数千万人の人が脂肪肝であるという計算になります。
 人間ができて五百万年と言われています。産業革命は三百年ほど前です。それ以降、人間は、三十万を超える、従来は自然界になかった化学物質をどんどん作っています。人間ができて、四百九十九万九千何百年は、ずっと有害物質もない、飽食もないという時代ですから、人間の肝臓はこういう時代に慣れきってしまっています。食べ物がない時代に、ちょっとしかとれない栄養で、何とか肝臓が頑張って、血液中のブドウ糖の濃度とかを一定にしていたのです。ところが今や、これまで経験したことのないほどのたくさんの食べ物が肝臓を通り過ぎようとしています。食べ過ぎ、飲み過ぎは、やはりよろしくないのであろうと思います。
最新機器で体内点検 公開診断
 フォーラムの第二部では、実際に医療現場で使われている最先端の機器を持ち込み、希望者を対象に、公開診断を実施しました。腹部エコー、頸動脈エコーによる診断に加え、血管の硬さ、体脂肪などを測定しました。予備診断で選ばれた三人について、金子教授、篁助教授をはじめ、金沢大学医学部スタッフらが、それぞれの診断・測定結果を解説し、参加者は、定期診断の重要性などを確認しました。
腹部エコー
超音波で肝臓の様子が分かります。肝臓に脂肪が付いているかも一目瞭然でした。
頸動脈
エコー超音波によって、血管の中の状態が映し出されました。血管の壁の厚さや脂肪のたまり具合、血液の流れを見ることで、全身の動脈硬化の進行具合などが分かります。
体脂肪
両腕、両足、体幹( 胴体)の五つの部位の体脂肪率を測定しました。腹囲やBMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)も合わせて診断しました。
血管年齢
血管の硬さなどを調べて、それぞれの血管年齢を測定しました。実年齢と比較することで、動脈硬化の進行具合などが分かります。
総合判定
エコーで見た肝臓や血管の状態、測定した数値結果などをもとに、総合的に診断することが大切です。


基調講演【2】

「生活習慣病の司令塔」
篁 俊成氏 たかむら・としなり 金沢大学大学院医学系研究科助教授

少しの肥満でも動脈硬化の可能性

 現在、肥満の患者は日本に二千三百万人いると言われています。ただ、国際的な肥満の定義でいうと、日本はアメリカの十分の一強しかいません。しかし、日本では男性も女性も、実は肥満度が正常のところからすでに代謝異常が増大してきています。動脈硬化の危険性は肥満度に応じて高まりますが、日本人の場合は、比較的正常な体型から少しの肥満で、もう動脈硬化の可能性が高まっているということになります。糖尿病の方、肥満の方は、しばしば肝臓に脂肪が蓄積しています。脂肪がたまるということは、肝臓の病気を促進する可能性があります。症状が進展すると、なれの果てには、肝硬変、肝不全、そして肝がんにまでなってしまいます。

「メタボリック」は氷山の一角

 話題になっているメタボリックシンドロームは氷山のようなものです。氷山の一角といわれるものが、表に見えている高血圧症、耐糖異常、善玉のコレステロールが低い状態、そして中心性肥満、中性脂肪が高い状態です。海の中にはもっと大きな氷山の本体が隠れています。その部分を何とかしなければいけない。私たちは、もしかしたら根本的な異常に脂肪肝がかかわっているのではないかと今、考え始めています。
 実際にいろいろ検討をしてみると、肝臓に脂肪がつくとメタボリックシンドロームを有する患者さんがすごく多いことが分かりました。さらに、肝臓自体の病気としての脂肪肝炎があるなしにかかわらず、肝臓に脂肪がついた状態では、メタボリックシ氏
「ンドロームを高率で合併して、将来は動脈硬化で困る可能性があることが分かってきました。

内臓に脂肪がたまると危険
「生活習慣病の司令塔「生活習慣病の司令塔
 動脈硬化というのは血管が狭くなる病気です。その壁には細胞や脂肪など、何かがたまっているのです。脂肪や細胞がたまって炎症を起こすと、破れて、血液の塊が急速にでき上がって、心筋こうそくとか脳こうそくといった血管が詰まる病気に発展していきます。このケースは内臓に脂肪がたまっている人とか、脂肪肝の方に多いことが分かってきました。内臓の脂肪がたまっていると脂肪肝もできてきますが、特に皮下脂肪がたまっている状態よりも、内臓に脂肪がたまっている状態のほうが危険であることが分かり、これがメタボリックシンドロームの診断基準を作った一つの根拠にもなっています。
皮下脂肪型肥満
内臓脂肪型肥満

6つの項目で食欲コントロール

 肝臓に脂肪がつくのを防ぐには、食事療法が最も大事です。皆さんが最も困難に感じるのは、食欲をコントロールできないということでしょう。そこで、六つの項目を提案します。
 まず、バランスです。品数を多く、一つ一つを少なく食べたほうが良いのです。お勧めは、おかずとご飯を交互に食べる「三角食べ」。実はこれができていない現代人がすごく多いのです。最初に高脂肪の自分の好きなものばかり食べる「ばっかり食べ」で、栄養のバランスが崩れて、脂肪肝に至るということが言われています。おかずとご飯を順番に食べていくことをお勧めします。
 二番目のポイントは食事時間です。食事を一回抜くと、基礎代謝といって、じっと安静にしていてもエネルギーを産生している、熱として出している、その状態が落ちてしまいます。食事による熱の産生は朝が一番強いです。だから、朝食を抜く人はそれだけで一日の基礎代謝が落ち、太りやすい体の状態になっています。さらに、夜になると熱産生は低くなってくるので、夜食型、しかも高脂肪食を食べる人は太りやすくなります。
篁 俊成氏
 三番目は、よくかむこと。たくさんかめばそれだけで満腹中枢が刺激されて、食べる量を減らすことができます。食事三十分前にチューインガムを食べた人と食べなかった人を比べると、ガムをかんでいた人のほうが二十%ぐらい食べる量が少なかったデータもあります。
 四番目は薄味にする。濃い味付けは主食をどんどん進めてしまいます。その代わり、塩分を制限して、汁物を一品つけると充足感も増します。
 五番目は感覚中枢を刺激しない。目の前にお菓子があるとつい食べてしまいます。だれかが食べるのを見ても食べたくなってしまいます。食欲は、こういう感覚によっても刺激されるので、家庭全体で間食などを目の前に置かないようにしましょう。
 六番目に、女性に多いストレス食い太り。ストレスを感じると食べる量が減ってしまう人もいますが、男性に比べて、女性はストレスによって過食が進行する人が多いのです。また、何かに熱中している間は食べなくても平気なように、暇もまたストレスとなるので、没頭できる趣味や楽しみを見つけましょう。

日常生活に運動を取り込む

 食事の次に大事なのが運動です。運動によって消費されるエネルギーは大したことありません。三十分ぐらい歩いても、ご飯半ぜん程度しかエネルギーを消費できません。しかし、太りにくい体を作ることができます。筋肉にどんどん糖を取り込んだり、体の熱産生を高めたりする働きが三日間ぐらい続くのです。
 運動に取り組むには、すき間時間を利用することをお勧めします。例えば、通勤や買い物を徒歩や自転車にする、エレベーターを途中で降りて階段を使う、お昼休みに公園までウオーキングするなど、日常生活での工夫が必要です。


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