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大学プログラム

北國健康生きがい支援事業
金沢大学プログラム

第3回フォーラム
「男の更年期、女の更年期〜おしっこの話、若さを保つクスリの話〜」

 金沢大学と北國新聞社は2月18日、北國新聞会館で、北國健康生きがい支援事業・金沢大学プログラム「男の更年期、女の更年期〜おしっこの話、若さを保つクスリの話〜」と題したフォーラムを開催しました。人間の寿命が延びた“代償”である更年期は、現代病ともいえます。フォーラムでは、更年期を克服するホルモン補充療法の最新情報を織り交ぜながら、人が老いていくなかで、いかに健康を維持し、若さを保っていくかを考えました。

【主催】 金沢大学、北國新聞社
【後援】 石川県医師会、金沢市医師会、石川県歯科医師会、石川県看護協会、石川県薬剤師会、石川県栄養士会
【協賛】 富士通、大鵬薬品工業、あおぞら薬局、アルプ、石川県予防医学協会、北國銀行、北陸銀行、みずほ銀行、のと共栄信用金庫、JA全農いしかわ、第一生命、北國がん研究振興財団

ホルモン補充で健康に若返り更年期を元気に克服


「更年期から輝くための秘訣」
専安全な補充療法で
心身に”若さ”を注入

小池浩司氏(こいけ・こうじ)
金沢大学大学院医学系研究科助教授(産婦人科)
更年期は人生の大きな通過点

 地球上の生き物のほとんどは、更年期を迎える前に死が訪れます。人間も七十年前までは、閉経年齢の五十歳前後で死を迎えていました。ところが、医学の進歩などにより、日本人の寿命が三十年以上も延びたことで、女性の更年期障害が問題となってきたのです。
 女性の一般的な月経周期は二十八日で、排卵と生理が二週間ごとに訪れます。女性ホルモンにはエストロゲンと黄体ホルモンの二種類があり、エストロゲンは常時、黄体ホルモンは排卵の後に分泌されています。この二つの女性ホルモンが体内に分泌されることで、女性の体は「美しく咲いている花」のように潤っているわけです。
 女性の更年期は、四十五-五十五歳の間でほとんどの人が経験します。一年間、生理がない状態が続いた時点で、医学的に「閉経」と診断します。閉経後の体内は、エストロゲンが不足した状態(図1)になり、さまざまな弊害が出ます。これを補っていくのが、ホルモン補充療法です。
 更年期では(1)自律神経失調症(のぼせ、ほてり、発汗)(2)睡眠障害(3)うつ状態(4)記憶力の低下-といった
症状が全体の80%の人に現れます。その症状には個人差があり、日常生活に支障をきたすほど重い人もいれば、まったく自覚がないまま終わる人もいます。閉経前後に「のぼせ」などを感じたら、更年期の"サイン"です。
 更年期の"うつ"は、働く女性にとって深刻な問題です。仕事でのミスが増えたり、対人関係でトラブルを抱えることも少なくありません。このことは、トータル的にみて女性の社会進出を妨げる要因にもなっています。
 また、専業主婦も例外ではなく、「うつ」によって離婚につながるケースが見受けられます。子育てが一段落したあとに訪れる更年期は、女性にとって乗り越えなければならない、大きな人生の通過点なのです。

若さを維持する「天然の化粧品」

 コラーゲンとヒアルロン酸を生成する女性ホルモンの働きによって、みずみずしく、弾力のある肌が生み出されます。つまり、「天然の化粧品」として、肌の若さを保っていたわけであり、閉経した女性の目の周辺には「小じわ」が増えます。
 ところで、日本全国で一千二百万人の患者がいる骨粗しょう症は、閉経後の女性にとても多い病気(図2)です。なぜなら、女性ホルモンの分泌が止まることは、骨密度の低下に直結するからです。
 実は、カルシウムを摂取するだけでは、骨は強くなりません。骨内部の骨基質にカルシウムが定着しなければ尿として排出され、骨は丈夫にならないのです。この骨基質の主成分はコラーゲンであり、女性ホルモンがなければ生成されないからです。
 また、五十歳以上の女性の死因をみると、心疾患(図3)、脳血管疾患が一位です。これらの病気は動脈硬化が主な原因です。
 肝臓から血管に運ばれるコレステロールは、俗に「悪玉コレステロール」(LDL)と呼ばれ、酸化しやすい特性があります。酸化したLDLは白血球の一種・マクロファージの標的となり、自分が死滅するまで食べ続けます。その残骸が血管にたまり、動脈硬化の原因となるのです。女性ホルモンのエストロゲンには抗酸化作用があり、動脈硬化を予防します。

月経周期に合わせた療法を

 ホルモン補充療法の副作用を心配される方もいますが、女性ホルモンの投与によって通常細胞ががん化することはありません。ただ、近年の研究では黄体ホルモンを投与した場合、体内にがん細胞があると、成長促進させることが分かっています。
 北陸では、一千人に一人が乳がんを患っています。エストロゲンと黄体ホルモンを連続投与する補充療法を十年間継続した場合、乳がんの発生率は一・三五倍と若干上がります。
 女性は月経による卵巣からのホルモン分泌で、十歳から五十歳まで自然にホルモン療法を行っていると考えてください。ですから、月経周期と合わせた形でエストロゲンと黄体ホルモンを投与すれば、乳がん、子宮がんのリスクを下げることができます。
 ホルモン補充を行う方法には、「飲み薬」と「はり薬」があります。中性脂肪が上昇するなどの副作用がある飲み薬に対し、はり薬は心筋梗塞や血栓を助長することもなく、安全な治療といえます。
 子育ても終わり、人生の実りの秋を迎えるわけですから、介護を受けず長生きしたいものです。ホルモン補充療法を受けることで、細胞は若返ります。更年期を迎えた女性が適切な方法でホルモンを補い、身も心も輝きを取り戻してほしいと思います。


「いつまでも若々しくあるために〜おしっこの話、若さを保つクスリの話〜」
男性の体にも起こる
更年期障害に注意

並木幹夫氏(なみき・みきお)金沢大学大学院医学系研究科教授

前立腺肥大症の85%は治療受けず

 男女を問わず、年齢を重ねていくにしたがって増えていくのが、「おしっこ」の悩みです。排尿は食事などと同様、誰でも毎日行います。尿漏れや頻尿が気になると、外出するのもはばかられてしまいます。おしっこが正常に出ることは、身体の若さを保っていることを示す、一つの目安になります。
 加齢に伴う男性特有の尿の病気として「前立腺肥大症」(図4)があります。前立腺は尿道を取り囲む臓器で、肥大すると尿道を圧迫します。症状は「排尿が困難」「尿に勢いがない」「頻尿」「尿失禁」「残尿感」などです。
 五十歳を過ぎると前立腺が大きくなっていく人が増えていきます。前立腺肥大症の患者数も増加の一途をたどっており、洋食化の進む食生活などの変化に原因があるといわれています。一九九八年の調査では、実際に治療を受けた男性は六十万人で、潜在的な患者は四百万人という推計もあります。
 就寝中、トイレに起きる回数が多いなどの自覚症状がありながら、85%の男性は治療を受けていません。それほど肥大していなければ、薬物療法で済ませることも可能です。ただ、症状が進行すると手術の必要な場合があります。最近は、開腹手術より、内視鏡手術が主流となっており、体への負担は少なくなっています。

PSA検査で前立腺がんを早期発見

 最近、日本でも増えているのが前立腺がんです。天皇陛下もこの病気で治療を受けられました。一九九〇年から二〇一五年までの二十五年間で、前立腺がんで死亡する人は、四倍近くに膨らむと予測(図5)されています。近い将来、日本人男性のがん一位が「前立腺がん」となる日が来るでしょう。
 前立腺がんも、他のがんと同じように進行すれば転移します。当然、検診による早期発見は欠かせません。前立腺がんの検査方法には、肛門近くにある前立腺を指で触る「直腸指診」、超音波で前立腺の大きさやがんの浸潤の有無を採血するだけで分かる「PSA(前立腺特異抗原)」検査です。この検査のおかげで、他のがんよりも発見率確認する「前立腺エコー」があります。
 そして、もっとも簡単な方法は、血液を二ccほど採血するだけで分かる「PSA(前立腺特異抗原)」検査です。この検査のおかげで、他のがんよりも発見率は高くなっています。
 このPSA値が四・〇以上を示した場合、前立腺がんが疑われます。ただ、検査値が四・〇以下だからといって安心できません。金沢市の「すこやか検診」では、二・〇以上の数値が出たら、泌尿器科に相談するよう勧めています。
 これからは、血圧の数字を気にするように、PSA値も把握するように心がけてください。年に一回は測定を行うよう、習慣化してほしいものです。

男性ホルモン値の測定を習慣に

 日本では百年前、男性が四三・九七歳、女性が四四・八五歳で死んでいました。
 現在、寿命は当時の二倍近くまで延びています。五十歳を迎える前に死んでいた時代にはなかった「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」という病気が今、注視されています。
 耳慣れない病名と思いますが、男性ホルモンのテストステロンが減少することで体に失調が生じる病気です。具体的には、加齢に伴う男性ホルモンの低下で、骨や筋肉が減少します。内臓脂肪も蓄積されるため、動脈硬化を誘発します。高齢になると狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患が増えるのはそのためです。もし、ご主人が急に怒りっぽくなったら、男性更年期障害の可能性を考えてください。
 男性更年期障害の改善に有効な治療法としては、ホルモン補充療法が挙げられます。アメリカでは、老化制御ホルモンとして注目されている「副腎アンドロゲ
ン」を含むサプリメントを服用する人が十万人以上いるといわれています。
 このサプリメントには、骨粗しょう症や動脈硬化の改善、免疫力の向上などに効果(図6)があるそうです。ただ、男性ホルモンの減少していない人が服用すると副作用が出やすいため十分な注意が必要です。
 四十歳以上でLOH症候群の徴候が見られる方は、まず男性ホルモンの値をべてください。血中フリーテストステロン値が八・五pg/ml以下だった場合、ホルモン補充の必要があります。一方、うつ病や骨粗しょう症の症状があっても一一・八pg/ml以上だった人は、副作用の出る可能性がありますので、ホルモン補充療法は避けてください。
 幸か不幸か、人間の寿命は八十歳まで延びました。日本では超高齢社会に突入しているにもかかわらず、高齢者が自立して暮らせる元となる健康についての方策や議論が不足しているように思います。第二の人生が、単なる余生ではなく、
喜びに満ちた質の高い人生になることを祈っています。


質疑応答(敬称略)
講演終了後、質疑応答が行われました。主な質問と回答を紹介します。
●腰痛があります。女性ホルモンの低下が原因なのでしょうか。
【小池】まず、腰の痛みの原因を特定するため、整形外科を受診してください。骨密度を測定すれば骨粗しょう症であるか判別できます。女性ホルモンを補充することで、痛みが取れる場合もありますので試してください。
●看護師をしていますが、入所者が更年期のような症状を訴えます。対応策をご教授ください。
【小池】入所者に「うつ」のような症状を確認した場合、その原因がうつ病にあるのか、更年期にあるのか、判断する必要があります。精神科を受診するとともに、産婦人科でもホルモン量を調べてください。
●ずっと以前から更年期という病はあったのでしょうか。
【小池】更年期の症状に苦しむ男性や女性は、昔から存在したのだと思います。日本人はみそ汁や納豆を食べます。みそや大豆は植物性のエストロゲンを含み、女性ホルモンの補助的な役割を果たしてくれますので、自然に症状が緩和されていたのかもしれません。
●糖尿病を患っており、トイレに行く回数で悩んでいます。
【並木】糖尿病を抱える人は「神経因性膀胱(ぼうこう)」という病を併発することがあります。そのため、膀胱の伸縮を司る神経の働きが鈍くなり、尿を排出する能力が低下します。頻尿の原因は前立腺肥大症だけではありませんので、専門医を受診してください。
●降圧剤の投与は、頻尿を誘発しますか。
【並木】血圧を下げるため、利尿剤を用いることはあります。何時にどれだけ排尿したかを示す「排尿記録」をつけてください。そうすれば、頻尿の原因が薬にあるのか、病気にあるのか、判別できます。
●不眠やのぼせ、手足のしびれといった症状があります。精神科では「うつ病ではない」と診断されており、この症状は男性更年期障害と考えるべきでしょうか。
【並木】精神科医からうつ病を否定する診断が下された四十歳以上の男性の場合、男性更年期障害であることが多いでしょう。血液検査で男性ホルモンの量を測定し、男性ホルモンの補充を行うべきです。
●若さを保つ方法を教えてください。
【小池】まず、若いころから健康的な生活を送ることが大切です。人間を車に例えれば、食べ物がガソリンならば、女性ホルモンは"エンジンオイル"に相当します。潤滑油である女性ホルモンなしの状態で、女性は三十年生き続けるわけです。女性ホルモンの補充を行い、人生に目的を持つことで、その三十年を若々しく過ごすことができるでしょう。
【並木】男性は仕事を退職する前に、定年後の趣味などを探しておいてください。第二の人生を行動的に楽しく過ごすには、身も心も元気である必要があります。
男性は仕事が忙しいこともあり、健康をなおざりにする傾向があります。病気になってからでは遅いので、自分の健康状態を早めにチェックしていく"予防"という考えが大切です。


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