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“医・食・寿を学ぶ”『肺がん「治す」と「防ぐ」』

 北國健康生きがい支援事業の金沢大学プログラム“医・食・寿を学ぶ”「肺がん『治す』と『防ぐ』」は6月24日、金沢市宝町の金大医学部十全講堂で開かれ、がんによる死因トップとなった肺がんの最新治療法や、効果的な禁煙法に関する講演に、参加者は熱心に耳を傾けました。

【主催】 金沢大学、北國新聞社
【協賛】 あおぞら薬局、アルプ、北陸銀行、みずほ銀行金沢支店、住友信託銀行金沢支店、三井アセット信託銀行、日本生命保険相互会社金沢支社、明治安田生命保険相互会社金沢支社

「だんだん減らす」は逆効果 分子標的治療薬に注目


「肺がんに『ピンポイント攻撃』」
がん増殖因子を狙い撃ち
矢野聖二氏
(教授、がん研究所腫瘍内科研究分野
・附属病院がん高度先進治療センター長)
がん死因6人に1人は「肺」

 がんによる死因の六人に一人は肺がんで、年々増加傾向にあります。二〇〇五(平成十七)年には、六万二千人もの方がこの病気で亡くなっています。
 肺がんの主な症状は、70〜80%でせきやたんが出るようになり、このほか体重の減少や喀血などが見られます。診断方法としては、レントゲンやCT、気管支鏡、PETといった機器を段階的に使い、がんの有無や進行度、種類などを特定していきます。
 今回は、そんな肺がんの中で、80%以上を占める非小細胞がんの治療法についてお話します。

がん細胞の増殖を抑制

 まず多く用いられている治療法として、「手術」「放射線治療」「化学療法(抗がん剤)」の三つが挙げられます。治療法は、がんの進行度や患者の状態などから総合的に判断しており、早期の場合はがん組織を取り除く手術が一般的です。最近では、体への負担の少ない内視鏡を使った手術も行われています。
 がんが左右の肺の間のリンパ節まで広がると放射線を照射してがん細胞を焼き切る放射線治療となり、肺以外への転移も確認される進行期には抗がん剤を投与します。抗がん剤は二種類を併用するケースが多く、現在、肺がんに対して十種類以上の抗がん剤が認可されています。抗がん剤には延命効果もあり、長年、肺がん治療で最終的に頼りとされる存在でした。
 近年、その抗がん剤の効果も期待できなくなった患者に対する第四の治療法として、「分子標的治療薬」への注目が高まっています。分子標的治療薬は、がん細胞の増殖因子となるたんぱく質などをピンポイントで攻撃する薬で、さまざまな種類の開発が進んでいます。

進行がんにも改善例

 現在、国内では、「イレッサ」という分子標的治療薬が認可されています。イレッサは手術のできない状態で、しかも再発した患者に限って投与が許されます。抗がん剤が効かなくなった人でも20%の方に病状の改善が見られます。
 このイレッサは錠剤タイプの内服薬で、増殖にかかわる上皮成長因子受容体をターゲットにがん細胞の中に入り込み、外からの刺激を遮断することで、がん細胞の異常増殖を防いでくれるのです。
 また、イレッサは、これまでの研究で、「肺の腺がん」「女性」「東洋人」「健康状態がいい」などの条件で、効きやすいことが分かっています。「たばこを吸ったことがない」ことも、イレッサの効果を上げる重要な要素です。
 わたしが診療した七十代の女性は、レントゲンに真っ白な影となって写るほど、がん細胞が広がっていました。それでも、イレッサ服用後わずか二週間で、影がきれいに解消され、二年以上にわたって再発を防止できました。

副作用の恐れに理解も

 もっとも、最新の治療法だからといって、いい面ばかりではありません。発疹や肝障害、下痢などの副作用が、服用した人の56%で現れるとのデータが出ています。さらに、5・8%の確率で間質性肺炎を患い、2・3%の人がこの病気で命を落としています。
 つまり、イレッサを服用した百人中二人が副作用で亡くなっているのです。特に、「喫煙者」「全身の状態がよくない人」「もともと肺の病気を抱えている人」が、間質性肺炎を引き起こしやすいと言えるでしょう。
 また、数年後に認可が考えられる分子標的治療薬に、「アバスチン」があります。アバスチンは、新しい血管を形成する血管内皮成長因子を標的にしています。血管ができるのを防ぐことで、栄養分ががん細胞に届かないようにしており、次世代の分子標的治療薬として期待されています。
 しかし、アバスチンも倦怠感や腹痛、頭痛、喀血、消化器の障害など、さまざまな副作用が確認されています。

セカンドオピニオンも大切

 ただ、どの治療法を選択しても副作用などの危険はつきものです。
 主治医とよく相談し、十分納得した上で自分に合った治療法を選んでください。その際、肺がんの種類や広がり、治療法と副作用などをしっかりと確認しておくことが大切です。
 もちろん、主治医との信頼関係も重要ですし、医師の努力とともに、患者や家族の協力が不可欠なことは言うまでもありません。
 いろいろな情報を収集する上で、主治医以外の意見を聞くセカンドオピニオンもおすすめします。金沢大学附属病院でもセカンドオピニオン外来を開設していますので、悩まれている方は、ぜひ相談に訪れてください。


「こうすれば、たばこは、やめられる」
ガム、パッチでニコチン克服
野村英樹氏
(准教授、附属病院総合診療部・総合診療内科)

軽視できぬ受動喫煙の害

 たばこが原因で亡くなる方は、国内の年間死亡者数の10%を超える十一万四千人に上ると言われています。喫煙者の三人に一人が、たばこで命を落としているのです。
 さらに、副流煙などを吸い込む受動喫煙で、一万九千人〜三万二千人が亡くなっていると推定されます。たとえ自分が吸わなくても、周囲に喫煙者がいる人は決して安心できないということです。

喫煙は脂肪50キロに相当

 たばこによる死因で最も多いのが「肺がん」です。喫煙者の八人に一人は、肺がんで亡くなっています。世界的な疫学者の故平山雄先生の研究では、もしこの世にたばこがなかったら日本人の肺がんは三割に減ることが分かっています。
 ほかにも、肺気腫や脳卒中、心臓病など多様な病気のリスクを高くします。一方、受動喫煙では、肺がんよりも脳卒中や心臓病、肺炎で亡くなる方が多くなっています。
 また、喫煙と精神の病との因果関係を裏づけるデータもあります。喫煙者は非喫煙者に比べて、うつ病で四倍、全般性不安障害で五・五倍も発症率が高くなっています。パニック障害にいたっては十五・五倍で、男性で発症する人のほとんどが喫煙者です。
 喫煙者の中には、「禁煙すると体重が増えるので、逆に体に悪い」と言う人もいます。確かに、たばこをやめると、平均で二、三キロ増加します。けれども、心臓病で考えた場合、喫煙は脂肪が四十〜五十キロも増えたのと同程度のリスクがあると言われているのです。

依存性は麻薬並み

 たばこは、これほど健康によくないにもかかわらず、やめられない人が多いのはなぜでしょうか。
 その理由の一つは、たばこに含まれ、ヘロインやコカインといった麻薬並みに依存性が強いニコチンにあります。人間の脳には本来、イライラを抑えてくれるリラックス物質があるのですが、たばこ(ニコチン)を吸い始めて、早い人では2週間もすると、リラックス物質が不足して、ニコチンがないと落ち着けない脳ができてしまいます。そのイライラを抑えるためにまた、たばこを吸ってニコチンを取り込んでいるのです。
 つまり、禁煙を成功させるには、ニコチン依存をどう克服するかが重要な鍵だと言えます。ちなみに、喫煙を始めた年齢が低いほど依存度は高く、喫煙者の90%が二十歳まで、98%が二十五歳までにたばこを吸っていたというデータもあります。
 依存度のチェックは、ファガストロームニコチン依存度指数(図)で、簡単にできますので、ぜひ確認してください。

代替行動で習慣改善

 禁煙する際の要諦は、ある日を境にすっぱりとやめることです。よく、たばこの本数をだんだん減らしていく方がいますが、失敗するケースが多く、逆に本数が増えてしまうという人も少なくありません。
 当然、ニコチン依存度の高い人ほど、最初のうちは、禁煙はつらいでしょう。そのときは、ニコチンガムをかんだり、ニコチンパッチを張ったりなどの方法で、依存を緩和できます。
 その際、使用法はきちんと守ってください。例えば、ニコチンガムは、十〜十五回かんでから歯茎の前にはさむことを一分ごとに繰り返すのが正しい方法です。粘膜からニコチンがじわじわと伝わっていきます。ニコチンパッチは、かぶれやすいので、毎日、張る個所を変えるようにしましょう。
 また、たばこをやめられない理由に、習慣やくせになっていることが挙げられます。例えば、起床後や食後の一服、コーヒーやお酒を飲むときに吸うといったものです。飲酒を控えるなど生活パターンを変えると、喫煙への欲求を抑制できます。ほかにも、禁煙中に氷や酢昆布などを口に含む代替行動法、たばこやライター、灰皿を処分するなどの環境改善法も有効です。

愛情伝えて禁煙サポート

 ご主人やお子さんなど、大切な人にタバコをやめてほしいと思っている方は、「禁煙をしつこく言わない」「愛情を伝える」を心がけてください。なぜなら、毎日のように「たばこをやめて」と言っても、注意されることが当たり前になり、あまり効果はありません。
 年に三、四回、真剣に話す方が効果的なのです。さらに、「あなたの体に悪いわよ」と言うのではなく、「わたしはあなたの体が心配です」といったように、自分自身の気持ちを伝えるIメッセージが、素直に心に届きます。
 そして、「たばこをやめよう」と決意したとしても、自分一人の力では不安な方は、ぜひ禁煙外来に足を運んでください。金沢大学附属病院の禁煙外来でも行っている保険診療は、十二週間で五回通院するプログラムです。年間のたばこ代よりも、はるかに安く受診でき、効果が上がります。


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