トップページ
> 大学プログラム
大学プログラム
北國健康生きがい支援事業
●
第2回福祉創造フォーラム
北國健康生きがい支援事業の金城大学プログラム第2回福祉創造フォーラムは11月18日、白山市の同大学で開かれ、基調講演と分科会を通して、テーマである「地域福祉の潮流と実践そして展望」を多面的に探った。
【主催】
金城大学、金城大学後援会、北國新聞社
【主管】
金城大学
【後援】
石川県、白山市
「地域福祉の潮流と実践そして展望」
老後をはつらつと生きるために
ごあいさつ
第2回大会長・金城大学学長
本田 昂氏
日本は超高齢社会を迎えています。たとえ障害があっても、たとえ介護が必要となっても、「住み慣れた地域で普通に生活できる」。これが、これからの福祉の進むべき道だと思います。また、その基盤整備を進めていく上で何が重要なのかを、今日のフォーラムを通して考え、意識の共有ができればと願っています。
金城大学はこの4月、医療健康学部を新設し、これまでの社会福祉学部と合わせて、福祉の総合大学としてスタートしました。地域社会における医療と福祉のセンターとして、さらに優れた教育体系のもとで次代を担う福祉人材の育成に努めていきたいと思います。
基調講演
“自分らしく楽しく”を支えるケアへ!
NPO法人日本ダイバージョナルセラピー協会理事長
芹澤隆子氏
1949年生まれ。コピーライターを経て、90年、中高年向け情報誌『綺羅々』を創刊、編集長に。以来、高齢者問題を積極的に取り上げ、94年からはオーストラリアとの交流を深め、日豪の高齢者福祉の架け橋として活躍。ダイバージョナルセラピーの日本での普及に力を入れ、02年NPO法人日本ダイバージョナルセラピー協会を立ち上げる。有限会社ウエル・プラネット代表取締役も務める。
老後を楽しめるケアに転換しよう
「最低限」に縛られる日本
戦後、日本の福祉は、憲法第25条でうたわれた「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に基づき、「標準」ではなく「最低限」を目安にしてきました。
生活の3大要素が「衣、食、住」なら、介護の3大要素は「食事、排泄、入浴」です。この3つが満たされさえすれば、人は果たして幸せと言えるのでしょうか。
また、施設も「入所者何人に対して最低○○人の介護職員」とか「最低○○メートルの廊下幅」などの細かい規定が設けられています。この基準をクリアするために経費がかさみ、そのしわ寄せが施設で働く職員の待遇面にも影響を及ぼしています。
最低限のサービスしか保障されない施設入所者と、厳しい環境で働かざるを得ない施設職員たち。「最低限」という基準が、双方にとって不幸な結果をもたらす原因になっています。これが、日本の福祉の大きな問題点なのです。
職員が少なくても大丈夫
ダイバージョナルセラピーという言葉と出会ったのは、福祉施設の視察で訪れたオーストラリアです。
向こうでまず気づいたのは、施設の玄関先に必ず入居者の権利と義務の憲章を掲出していることでした。「私の文化や生活習慣は私の権利」「家庭的環境で暮らすのは私の権利」「自分の受ける介護の決定に参加する権利」など18項目の権利と、「他人の権利を尊重する責任」「自分の情報を提供する責任」など4項目の責任を記しています。
中に入ると、居室の家具、カーテン、食器、インテリア小物が、入居者が自宅にいた時とほとんど同じで、犬や猫、小鳥をペットに飼っている人も多くいました。
そして何よりも驚いたのは、職員数の少なさです。「この人数で大丈夫?」と心配しましたが杞憂でした。入居者が以前と変わらない生活環境を保つことで精神的に落ち着き、問題行動を起こす人が少ないため人手がかからないというのです。
質が向上、コストも削減
オーストラリアの福祉でもうひとつ見逃せないのが、1997年に導入した高齢者施設認定監査制度です。マネジメント、医療・介護、入居者のライフスタイル、食事・防災の4領域で審査し、入居者やその家族への聞き取り調査も含まれます。
どんな人員をどれだけ配置するかは施設の判断であり、審査側は入居者が自分らしく安心して過ごせる環境が整っているかどうかを見ます。仮に水準に達していなければ改善勧告が出され、最悪の場合は施設閉鎖が命じられるという厳しいものです。
オーストラリアでは、高齢者福祉の国家戦略として「老いることは楽しむこと。耐えることではない」を掲げています。そして、この中で重要視しているのが、レジャーやアクティビティーへの参加です。自分にとって価値のあるレジャーは、ストレスを緩和するばかりか、周囲の人々とのふれあいや意欲の刺激を通して、身体能力の改善や認知症を予防する大きな効果があるからです。
過去の反省に立った憲章の制定と監査制度の導入、さらに、レジャーを積極的に取り入れることで、福祉の質が著しく向上する一方、施設の運営コストは下がったそうです。今後の日本の福祉の方向を指し示すモデルと言えるのではないでしょうか。
チームケアの一員で活躍
ダイバージョナルセラピーは、個々人の興味や能力に応じて、レジャーやアクティビティーのプログラムを設計し、実践を観察しながら評価し改善する一連のプロセスを指します。もちろん、参加の有無も含めて何を選択するかは、当事者の意思が尊重されます。
この仕事に携わるのがダイバージョナルセラピストと呼ばれる人で、オーストラリアでは大学や高等専門機関などで人材養成をしています。高齢者施設をはじめ精神科病棟や地域ケア施設、リハビリテーション機関などに勤め、経営者、看護師、介護士、作業療法士、栄養士らで構成するチームケアの一員として活躍しています。
日本では2002年暮れに、NPO法人日本ダイバージョナルセラピー協会が認証を受け、人材養成のための講座やセミナーに力を入れています。年を追うごとに活動の輪が全国へ広がっており、福祉の現場でダイバージョナルセラピーを浸透させる推進力になってくれることを願っています。
分科会1
「介護福祉分科会」
テーマ:
地域における高齢者ケア〜その人らしさを支えるケア〜
座長:小林千恵子
(金城大学教授)
アドバイザー:芹澤隆子氏
「グループホーム『ふくふく』の活動」
石原俊彦氏
(介護老人保健施設福久ケアセンター・サービスマネジメント部長)
地域貢献が存続のカギに
4分野で地域支援
規模の大きな介護施設であれば、地域の高齢者に対して入所、通所などの受け入れが可能ですが、グループホームのような小さな施設では難しいのが実情です。そこで、私たちのグループホーム「ふくふく」では、「健康教室」「地域交流会」「各種相談」「駆け込み所的役割」の4分野で地域への支援を行っています。
地域との信頼が大切
この地域支援は、グループホームにとって今後ますます大切になると思います。地域に支援を求めるだけでなく、何らかの形で地域貢献することによって、グループホームの存在や必要性を理解してもらい、信頼関係を結ぶことができるからです。
「ふくふく」では、いま挙げた4分野のほかに、神社の草取りなどにも参加し、地域の方々の信頼を得られるよう努めています。
「ユニットケアにおける『その人らしさ』の尊重」
梶田真紀氏
(特別養護老人ホームあがたの里介護士)
生活リズムに合わせた介護を
起床も朝食もまちまち
あがたの里のユニット型新館では、朝、一斉に起こしたりはしていません。入所者の生活リズムで起床時間にずれがあるためで、スタッフが順々に「起きてますか?」と聞きながら起床介助をしています。
そして、7時半から始まる朝食も、全員そろってということはありません。8時から食べるという人もいれば、昼近くになって食べる人もいるからです。
体の動く人は食事用意も
体の動く人には食事の準備に加わってもらい、入所者同士のコミュニケーションや生きがいづくりに役立てています。
施設に入ったからといって、その人の生活のリズムがすぐに変わるものではありませんし、無理に変えるのはよくありません。その人が長年続けてきた生活リズムを尊重することも、重要な介護支援だと考えています。
質疑応答
参加者
入所高齢者の家族との関係はどうなっていますか。
石 原
うちの場合、家族会に入ってもらうことを入所条件にしています。月1回の会合に出席してもらうほか、行事の運営にも家族会にかかわってもらっています。
参加者
重介護の人が入所してきた時、ユニット割はどうされていますか。
梶 田
既に入所されている人の居室の移動はなるべくしないようにしています。しかし、特定のユニットに重度の人が集中すると職員の負担になるので、ユニットごとのバランスはやはり考えています。
分科会2
「医療健康分科会」
テーマ:
アンチエイジング“加齢による身体機能低下をいかに防ぐか”
座長:田辺 茂雄
(金城大学講師)
「加齢による身体機能の低下とその特徴」
丸太和夫氏
(まるた老年リハビリ研究所所長)
将来見すえ、老いない備えを
生理的老いと病的老い
個人差はあっても、老いはだれの身にも訪れます。生理的老いと病的老いのふたつがあり、生理的老いは20―30代から始まります。呼吸運動や新陳代謝など、生きるために重要な働きをする生理機能がゆっくりと衰えていきます。
一方、病的老いは、病気にかかったことで臓器の機能などが低下し、生理的老いに比べて早い速度で老化が進行します。
生活習慣と密接な老い
私たちの生活習慣と深くかかわっているのが生理的老いです。例えば、高齢者に顕著な前かがみの姿勢は、子どものころから落ちた物を拾ったり、草むしりなどの際に腰を曲げた方が楽で、習慣化することで起きると考えられます。腰の椎間板への負担は予想以上に大きく、加齢とともに徐々に体型に影響を及ぼすのです。
ですから、悪い姿勢にならないためには、生活習慣を改善する必要があります。会社なら、勤務時間の合間に柔軟体操を適度に入れるなどのガイドラインを作るとよいでしょう。
そして、個人も自分の老いと向き合い、40歳になったら60歳、60歳になったら80歳の元気な自分をイメージして、生活習慣の改善や運動などに積極的に取り組んでください。
「加齢による姿勢の変化とその予防法」
荒木 茂氏
(社団法人石川県理学療法士会会長・石川県リハビリテーションセンター指導課長)
ストレッチと運動で健やかに
ゆがみの放置は危険
年を重ねると腰や背中が曲がる、肩が上がらないなど、体にゆがみが生じます。長時間、姿勢を変えなかったり、似た動作を毎日繰り返すことで体の組織を傷つけてしまうからです。また、職場環境が原因で、近年、若者の姿勢にも異常の見られるケースが散見されます。
これを軽視して放置するのは危険です。例えば、腰の曲がりは股や膝を変形させ、痛みを伴う2次的障害を引き起こす可能性があるからです。
無理な運動は逆効果
ゆがんだ体を治したり、予防するためには、日ごろからいい姿勢を取り運動を心掛けることが大切です。
そのひとつに、いすに浅く腰かけ、手を左右に広げ、胸を後ろに反らして腹式呼吸するストレッチがあります。1時間に1回ほどの間隔でよく、簡単にできて効果的です。
運動では、水泳やサイクリングなど楽しみながら続けられるものを探してみてください。心肺機能を維持するためには、週5回、30分が目安です。
ただ、無理な運動はかえって逆効果となります。理学療法士らの指導やアドバイスを受けるなどして、若いうちからアンチエイジングのための運動を実践していきましょう。
分科会3
「地域福祉分科会」
テーマ:
地域における包括的支援のあり方とネットワークづくり
座長:内 慶瑞
(金城大学講師)
「加齢による姿勢の変化とその予防法」
北山達朗氏
(七尾市地域包括支援センター長・七尾市社会福祉協議会事務局次長)
一人ひとりが支え合う地域に
「生きがい」が自立促す
地域包括支援センターの業務は多岐にわたります。例えば、高齢者とその家族からの相談や、介護が必要になりそうな人への支援計画、ケアマネージャーと関係機関との連携調整などがあります。
また、介護認定に向けて、筋力や体力の衰えを調べる「基本チェックリスト」への記入を求め、それを基に生活プランを作成します。介護を受ける人は、将来に不安を抱いたり、周りの人に迷惑をかけていると考えがちです。このため、生活プランづくりに当たっては、その人がやりたいことや生きがいが持てるような内容に腐心します。
社会福祉協議会も地域福祉の重要な役割を担っており、七尾市独自の「ご近所おたすけプラン」の窓口にもなっています。これは、災害時に高齢者や体の不自由な人の避難などを地域住民がサポートする制度で、作成した見守りマップは日ごろの声かけなどにも活用しています。
地道な活動が万一の力に
普段からの地道な福祉活動が、いざという時に力を発揮すると思います。阪神淡路大震災や能登半島地震では、高齢者の避難遅れや飲食物の配給遅れなどの問題点が指摘されましたが、近所の人が高齢者に付き添う体制を整えておけば、これらを防ぐことができます。
同時に、制度だけでは埋められない部分は必ずあります。地域包括支援センターや社会福祉協議会の活動にしても、なかなか24時間というわけにはいきません。
そこは、支える側と支えられる側の双方が、相手を敬う気持ちで補い合うことが大切です。そして、地域住民の助け合いが欠かせません。その心掛けと行動が、安心の高齢社会を築いていくベースになると思います。
質疑応答
参加者
高齢者に対する災害時の支援や振り込め詐欺などの被害防止で、どんな対策を取っていますか。
北 山
災害時の支援は「ご近所おたすけプラン」を基に行います。犯罪対策では、最近、消火器の悪質な訪問販売があり、速やかに注意を促すチラシを作って老人会や介護会などに配布しました。
参加者
学校で福祉教育をしたいが、日程の調整や企画の決定などで自治体のサポートを受けることはできますか。
北 山
単に日時や回数だけでなく、希望する具体的な内容を伝えてやれば、行政も対応しやすくなります。明確な企画意図や方法を提示するとよいでしょう。
Copyright (C); THE HOKKOKU SHIMBUN All Rights Reserved.
〒920-8588 石川県金沢市南町2番1号 北國新聞社広報課 Maill :
ikigai@hokkoku.co.jp