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社会福祉講演会

 北國健康生きがい支援事業・金城大学プログラムの社会福祉講演会「気になる子がいたらー発達障害のサインに気づこうー」は七月二十六日、金沢市の北國新聞二十階ホールで開かれました。金城大学の大塚郁朗教授が発達障害の子どもたちの行動パターンや接し方などについて解説し、来場者はメモを取りながら講演に耳を傾けました。

【主催】 金城大学、北國新聞社
【後援】 石川県、白山市、石川県医師会、金沢市医師会、石川県歯科医師会、石川県薬剤師会、石川県栄養士会、石川県看護協会

「気になる子がいたら」発達障害のサインに気づこう


悪い面だけでなく 良い面に光当てて

68万人が発達障害

【講師】金城大学教授
大塚 郁朗(おおつか・いくお)氏
 一九九〇年代に入り、小中学校の通常の学級に、読み書きや計算ができない学習障害がある児童・生徒がいることが話題となりました。以後、「注意欠陥多動性障害」や「高機能自閉症」など、知的障害を伴わない発達障害のある子どもたちの存在が明らかとなり、支援の必要性が課題となっています。
 二〇〇三(平成十五)年、文部科学省が小中学校三七一校の児童・生徒約四万一千人を対象に行った教師へのアンケート調査の結果によると、知的発達に遅れはないものの、学習・行動面で困難を示す児童・生徒の割合は6・3%に上りました。約千八十六万人いる全国の児童・生徒数(二〇〇六年五月一日現在)で換算すると約六十八万人になり、四十人学級あたり二〜三人の発達障害の子どもがいる計算です。
 知的障害を伴わない発達障害には、注意欠陥多動性障害、広汎性発達障害、学習障害などがあり、脳の中枢神経系に何らかの要因による機能不全が起こっていると考えられます。脳の機能的な問題で、子育てや家庭環境など養育面で保護者に責任はありません。

生活動作を確保する

 リハビリを行うと、まず手足などの運動機能が回復し、次に入浴や食事といった日常生活動作ができるようになります。患者が喜ぶのは、手足が動いたときではなく、「食事ができた」「お風呂に入れた」など、日常生活動作ができたときです。180日で完全回復しなかった人が転院してリハビリを続けた結果、趣味のマラソンが再びできるまでになった例さえあります。
 リハビリの最大の目的は、このように人間らしい生活を取り戻してもらうことです。そして、発症以前の生活に戻りたいという気持ちが、リハビリをより前向きなものにします。
 仮に、運動機能が十分に回復しなくても、日常生活動作が不自由なままということはありません。日常生活をサポートする道具を使う訓練をすることで、毎日の暮らしを支障なく送ることができます。
 例えば、右利きの人で右半身がまひしてしまった場合は、左手で食事ができるようにリハビリをします。どんな動作ならば可能かを柔軟に考え、その動作を反復することで、感覚的に身につけられるようになるのです。
 気をつけたいのは、個々人が自分の解釈でリハビリを行っては逆効果になるということです。障害の度合いは一人ひとり違うため、万人に当てはまるようなリハビリは存在しません。専門家の指示のもと、適切なリハビリを受けることで、生活動作を不自由なくこなせるようになります。

注意欠陥多動性障害の診断基準
以下の6つが6ヵ月間持続すれば疑い
不注意
aケアレスミスが多い 
b1つのことに集中してずっとやり続けることが難しい
c聞いているように見えるが、後から確認すると分かっていない
d規則・約束に反発しているのではないが、すぐ忘れる・興味が移ってしまう
e順序立てるのが苦手
f根気がいることなどコツコツ積み上げていくことを非常に嫌う
gしょっちゅう「○○どこだったっけ、どこに置いたっけ」と他人に探してもらう 
h注意散漫。授業でも家にいても何か物音がするとそちらの方を向いてしまう
i日課ができない
多動性
a授業中に立ち歩く
bもじもじしたり、そわそわしている。授業を聞かないで、いたずらしたり隣の子にちょっかいを出す
c朝礼や集会で走り回る
d集中しておとなしく遊んでいることができない。(テレビゲームを除く)
eいつも動いている。じっとしていられない
fおしゃべり。放っておくとずっとしゃべっている
衝動性
a人が喋り終わってないのに自分の言いたいことを話し出す
b順番が待てない
c割り込みが多い

判断よりも反応が先行

 ところで、注意欠陥多動性障害とは、年齢、発達につり合わない社会活動や学業に支障をきたす「注意力」「衝動性」「多動性」を特徴とした行動障害です(表は「注意欠陥多動性障害」の診断基準)。症状は七歳以前に現れ、症状の項目のうち六つ以上が六カ月以上継続した場合、この障害が疑われます。
 これらの症状は一般の方々にも当てはまるものが多くありますが、日常生活に支障をきたすレベルが判断基準となります。
 注意欠陥多動性障害の子どもは、物事を理解し、行動の善悪が判断できます。しかし、判断よりも前に反応が先行するため、周囲の人たちの誤解を生みます。物心がついたころには、「すぐに人をたたく」といった非常識な行動をとり、親や先生などから、しかられたり、注意されることが多くなります。
 この障害のある子どもは、褒められるという成功体験が少なく、だれかに愛され、大事にされているという感覚が希薄になります。米国の調査では、約30%が非行に走っているという報告もあります。
 ですから、「一回しかったら三回褒める」のが鉄則です。また、目を離したすきに予想外の行動を取る傾向があり、交通事故などには十分注意してください。

常に笑顔で待つこと

 次に広汎性発達障害には、自閉症、アスペルガー障害などがあります。これらの障害は、三歳までに対人関係やコミュニケーションなどに異常行動が見られるようになります。
 この障害の特徴は、人とうまく付き合ったり、人の気持ちを察することが苦手な点にあります。ですが、幼いころから積極的に接することで、年齢を重ねるうちにコミュニケーション能力が改善する可能性はあります。
 また、話し方が一方的で、相手の問いかけを無視する傾向や相手の言葉を繰り返す「反響言語」が見られたりします。さらに、関心を示す範囲が狭く、パターン的になりがちで、反復や横目づかいなどの奇異な行動、「切る」「刺す」などの言葉で怖がることもあります。
 よく耳にする自閉症は、男子の発症割合が四対一と女子より圧倒的に高く、三タイプに分類されます。人に興味を持たない低機能自閉症が約50%、人と積極的にはかかわらない中機能自閉症が約20%、人と積極的にかかわる高機能自閉症が約30%です。このうち、高機能自閉症は知能指数が七十〜七十五以上で知的障害を伴いません。
 自閉症の子どもとコミュニケーションを取るには、まず自分の目線を子どもの目線まで下ろし、目と目を必ず合わせてから短い言葉で話しかけてください。また、子どもが自分の指示通りに動いてくれないと、イライラするものです。そんな気分は表情に表れます。自閉症の子どもは、表情や姿勢などから相手の気分などを感じ取ります。精神的なゆとりを持ち、常に笑顔で待つことを忘れないでください。

現実と仮想を混同しがち

  アスペルガー障害は、自分の興味だけに没頭する傾向があります。興味を示すのは、標識や乗り物、バスの路線図などのカタログ的な知識です。知覚が過敏で、大きな音や光、人との接触を避けようとするほか、アニメなどのキャラクターを一人で何役も演じ、独り言を繰り返すこともあります。
 注意すべき点は、ゲームや映画の世界の出来事を現実世界でも実現できると考える可能性があることです。戦争ゲームなどに熱中するあまり、実際にまねて事件になったケースがあります。ゲームと現実は違うのだとはっきり教えることが肝心です。
 最後になりますが、発達障害の子どもたちの悪い面だけを見るのではなく、良い面にも光を当てることが大切です。例えば、自閉症の人なら「人の気持ちが分からない」という特性があります。でも「人をだますことができない」と考えてください。注意欠陥多動性障害の人なら、「じっとしていられない」という特性があります。発想を転換すれば「活動的」なわけです。発達障害の問題に社会全体が取り組み、障害特性を肯定的にとらえて受け入れていくことが、いま求められています。


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