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森鴎外の間違い 食事療法の効果認めず |
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北國新聞(朝刊)2007年01月29日付 |
「医者の不養生」という。健康づくりを期待されているはずの医師の中に、糖尿病などの生活習慣病を抱えた人や喫煙の習慣から抜け出せない人が少なくない。医者の健康指導にはときどきとんでもない間違いがある。有名なのは明治の文豪・森鴎外の話。森は医者だったが、医学の歴史の中では汚点を残した。
二十世紀の初めまで日本には脚気(かっけ)という病気がまん延しており、とくに軍隊の中で猛威をふるっていた。この病気にかかると手足のしびれや動悸(どうき)などの症状が現れ、進行すると歩行困難になり最後には心不全で死亡する。西欧にはあまりなく、アジアに多く見られるので風土病とも考えられていた。英国で医学を学んだ海軍軍医の高木兼寛は、脚気の原因は西欧と日本の食事の違いにあるとして、白米ではなくパン食を取り入れたり、肉を食べることを推奨した。この食事指導を受け入れた海軍では脚気患者はほとんど見られなくなったという。
ところがドイツへ留学した森鴎外らの陸軍軍医は、「脚気の原因は細菌であり、食事の改善などで病気が治るはずがない」と、高木を攻撃した。日清戦争や日露戦争に出兵する陸軍には麦飯を供給せず、この結果銃による死者をはるかに上回る脚気による「戦死者」を出すことになったのである。その後脚気の原因は麦や肉に多く含まれるビタミンB類などの不足であることが明らかになる。
さて、今日、薬の効果を証明するには、本物を飲む人と偽薬を飲む人のグループに分けて比べるという臨床試験を行う。本物を飲んだほうが偽薬を飲んだより一カ月でも寿命が長ければ、「この薬には科学的根拠がある」とされるのだ。
例えば野菜・果物の摂取が少ないとがんの危険性が高くなることは疫学的によくわかっているはずだ。ところが、がんの研究者は野菜・果物のベータ・カロテンや食物繊維を取り出して実験するため、わざわざ「がんを予防する効果はなかった」という常識を打ち消すような結論を導かなければならないことがある。(林義人、医療ジャーナリスト=小松市出身)
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