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医療記事特集
がん最前線

〔胃の切除〕 切れば「生えて」こない 食事に注意、大食い禁物
北國新聞(朝刊)2007年03月19日付

 胃がんの手術を受けた患者から「先生、胃は切っても生えてくるんですよね」あるいは「残った胃が、だんだんに大きくなるんでしょう」と聞かれることがある。子どもの患者ではない。道理をわきまえた大人が無邪気にこう尋ねるのだ。

 確かに肝臓のように再生する臓器もある。しかし胃は、残念ながらいったん切除したら二度と「生えて」はこない。少しでも早く、おなかを順応させてやることが必要で、そのためには食事のとり方が大切なのである。

 胃がんの手術を受けた場合、退院後一、二か月は自宅療養が必要である。この療養期間に胃が切り取られた状態を体に覚えさせ、手術後の後遺症を最小限に抑えなければ、手術前と同様の日々を過ごすことが難しくなる。

 代表的な後遺症としてダンピング症候群がある。一般に胃は食べた物を細かくし胃液と混ぜ粥(かゆ)状に消化し、それを少しずつ小腸に送り出す調節機能を持つ。胃で消化された食物が少しずつ小腸に送られると同時に、そこに胆汁と膵液(すいえき)が混ざり、吸収を円滑にする。

ダンピング症候群

 胃を切除するとこうした役割が失われるため、食べたものが十分消化されないまま急速に腸に落下(ダンピング)する。すると食事中または食後に動悸(どうき)や冷や汗、めまい、下痢などに悩まされる。これを早期ダンピング症候群と呼ぶが、経験しない人もいれば、しょっちゅう悩まされる人もいる。

 食後二、三時間たって空腹になるとめまいや脱力感、冷や汗、ときには意識障害が現れる晩期ダンピング症候群に悩まされる人もいる。

症状は予測つかず

 どんな人にこうした症状が出るかは、医師にも予測がつかない。かつて私が胃を全部摘出した患者でまったくダンピングに悩まされなかった人が、術後二年目のある夜、突然ダンピングによる意識障害を起こして救急車で病院に担ぎ込まれた。最初は脳梗塞(のうこうそく)と診断されたが、ブドウ糖を注射したところ意識を回復し、無事退院できた。

 繰り返すが、いったん切った胃は二度と生えてこないのである。手術後、元気になっても大食いは禁物。よくかんで、ゆっくり食事をする習慣を身に付け、あめや砂糖などをいつも持参して適度に間食を取る。ソフトバンクホークスの王貞治監督のようなスポーツマンでさえ、カレーライスを食べて再入院したほどなのだから。



 まい・まさよし=日本消化器病学会功労会員、金大名誉教授



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