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〔なぜ手術するか〕 第一に根治、次に緩和 自分らしく時を過ごす |
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北國新聞(朝刊)2007年03月26日付 |
がんの治療において手術をする最大の目的は、がんの根治である。ただ、がんが広く転移して切除することが難しい場合には患者が少しでもつらくなく日々を過ごせるよう行う手術もある。
一つは減量手術。がんをすべて切除できなくても、がんの量をできるだけ少なくし、抗がん剤の効果に期待し、命を延ばす方法だ。
もう一つ、緩和手術がある。昭和天皇が八十六歳で受けられた手術は、この緩和手術だった。
昭和六十二(一九八七)年夏、那須御用邸ご滞在中に、食事をもどされるなど、大きく体調を崩された。宮内庁病院で検査を受けられた結果、十二指腸が狭くなり食べたものの通りが悪くなっており、病名は慢性膵炎(すいえん)と発表された。
同年九月二十二日に行われた手術では、当時の東大医学部第一外科の森岡恭一教授と、武藤徹一郎助教授が執刀。病状が極度に進行していること、高齢であることなどから切除は不可能と診断され、十二指腸のがんは切除せず、腸の通りをよくするバイパス手術が行われた。
●公務もご趣味も
バイパス手術は順調にすみ、手術後二週間で退院された。お体は順調に回復し、昭和六十三年四月二十九日、陛下は八十七歳の誕生日を迎えられ、記者会見では、体調は回復し、疲れもないと語られた。その後、公務に復帰され、ご趣味の植物観察にも取り組まれた。
しかし秋には発熱や大量の吐血や下血が続き、翌年一月七日に崩御され、昭和の時代は終わった。
がんバイパス手術が功を奏し、発病から一年四カ月の延命と生活の質の維持に成功したのではなかろうか。
●あきらめず手尽くす
進行がんが見つかると、自暴自棄になる人もいる。緩和手術など気休めだと思うかもしれない。その気持ちは推察できるが、根治しないことが分かった瞬間に、命が終わるわけではない。体調に合わせて趣味を楽しみ、仕事を行い、家族と時間を過ごす日々は、決して絶望的な日々ではない。あきらめないで手を尽くせば、自分らしく時を過ごすことが可能になる。
がんで崩御された昭和天皇がすばらしい前例を示してくださったと私は思う。
まい・まさよし=映寿会みらい病院名誉院長、金大名誉教授
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