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医療記事特集
がん最前線

〔術前化学療法〕 抗がん剤でまず小さく 手術と組み合わせ効果
北國新聞(朝刊)2007年04月23日付

 私ががんの治療に携わった四十年前には、胃がんを治すには手術で切除するしかなかった。それが抗がん剤の進歩によって、手術前に抗がん剤を使って転移を消滅させたり、がんを小さくして手術の効果を高めることができるようになった。こうした方法を術前(じゅつぜん)化学療法という。

 術前化学療法を行うのは、がんがとても大きい場合や、離れたリンパ節に転移した場合。こうしたケースでは、手術でがんを切除をしても再発する可能性が高いためだ。

末期に投与、回復へ

 ある三十代の男性の上腹部を触ると、子どもの頭ほどもある硬いふくらみを感じた。レントゲンを撮ると、胃全体ががんに侵されているスキルス胃がんだと分かった。スキルス胃がんは、難治がんの一つで、約半数の患者は手術後一年以内に亡くなっている。CTスキャンでは、胃壁の肥厚(ひこう)と胃周囲のリンパ節の腫れから、ステージWつまり末期であることが分かった。

 5―FUとメトトレキセートの時間差投与という抗がん剤を組み合わせた治療を行ったところ、全身状態が改善した。食欲も増し体力もついたので手術した。切除標本を調べたところ、驚いたことに胃からがんが消えていた。

 ただ残念なことに、一部のリンパ節の微小ながん細胞が生き残っており、二年半後に再発し、亡くなった。

 「息切れして苦しい」と病院に来た、ある七十五歳の男性。貧血がひどく便が黒色だったため、すぐに内視鏡で胃を見ると、七センチ大のがんがあった。その時点で既に呼吸が随分苦しく、手術に耐える体力がなかったため、抗がん剤のTS―1(ティーエスワン)とイリノテカンを投与したところ、がんは三センチに縮小。全身状態も改善した。

胃から消える

 本人の了承を得て、胃を切除し、摘出してから顕微鏡で詳細に調べたところ、胃からがん細胞が消えていた。この男性は手術後二年たつ現在も健在である。

 既に転移があり、とても進行した胃がん患者に対し、抗がん剤によってがんを小さくし、微小転移を消滅させた上で、まだ残るがんを切除する。このような治療法は、今後まだまだ発展するだろう。



 まい・まさよし=伊藤病院内視鏡センター長・副院長、金大名誉教授



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