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医療記事特集
がん最前線

〔分子標的治療薬(2)〕 注目されるサリドマイド 増殖、転移食い止める?
北國新聞(朝刊)2007年05月14日付

 外科医としてこれまでにたくさんのがんを切除してきた。がん細胞の異常な増殖を食い止めるためには、がんを切り取って体外へ出してしまうのが最も確実だからである。

 だからこそ切除できないほどに進行していたり転移しているがんを見ると、残念でたまらなかった。

 そんな進行がんの治療にひと筋の光明となっているのが分子標的治療薬である。がん細胞の異常な増殖を促進する特定の分子の働きを食い止める薬である。ハーセプチンやゲフィチニブはそれぞれ乳がん、肺がんの抗がん剤として日本でも使われている。

 さらに血管新生阻害剤も登場した。

 がんは、VEGF(血管内皮増殖因子)を作り出し、新しい血管を形成し、自身に栄養を補給しながら増殖、転移していく。がんの増殖、転移を止めるためには新しく血管を作らないようにしてやることも大切だ。その働きをするのが、血管新生阻害剤である。世界中で臨床試験が行われている。

 日本でも臨床試験が終わり、厚生労働省から認可されている血管新生阻害剤として、大腸がんに対するアバスチンがある。

血管を作らせない

 がん細胞に血管を作らせない。

 この視点から考えた結果、意外な薬が再び注目されている。サリドマイドである。一九五〇年代後半に睡眠薬や胃腸薬として販売されたこの薬を、妊娠中に服用した女性から、手足の短い子供が生まれるなどの薬害を引き起こし、大きな社会問題となった。

 ところが近年、米国の研究者が、サリドマイドは強力な血管新生阻害剤であることを明らかにした。米国の血液学会にも、サリドマイドは一部の骨髄腫(こつずいしゅ)に有効という報告があった。

個人輸入で処方

 サリドマイドは日本では発売されていない。厚生労働省からも認可されていない。それでも、日本でも実際に、特定のがん患者には治療薬として処方されている。メキシコやイギリスの製薬会社から個人輸入され、治療に当たる医師が自分の裁量で処方しているのである。

 がんの進行を抑え、症状を改善し、生活の質を向上することができるのであればそれも一つの選択である。



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