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〔メンタルケア〕 治療は信頼から始まる 待たれる専門家の養成 |
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北國新聞(朝刊)2007年05月21日付 |
がんとの闘いの最前線で、われわれ医療スタッフにこれまで以上に要求されているのが、患者に対するメンタルケア、精神的な支えである。先日、金沢市の県文教会館でメンタルケア協会がスペシャリスト養成講座を開いた折、私も講師の一人として招かれた。その理由は、メンタルケアが必要とされる代表のような事例であるがん告知に、私が長く携わってきたからである。
●自己防衛の告知も
米国では一九七〇年代後半には、九割以上の医師ががんを告知するようになった。医療訴訟が増えた結果、自己防衛のために病名や病状を患者に伝える医師も増えたからだ。
日本には八〇年代半ばに告知をするという考え方が入ってきた。患者が自分の状態を知ることは悪いことではない。しかし、経験の浅い医師が機械的にがんであることを患者に告げている姿を見聞きするにつけ、いかがなものかと私は思う。患者は「がん」という言葉を聞いただけで、大きなショックを受けるからだ。
どのタイミングで切り出すか。どんな言葉で説明するか。私が告知するまでにあれこれ考えるのは、よいがん治療のためには、患者と、医師をはじめとする医療スタッフの間の信頼関係が欠かせないからである。
信頼から治療が始まると言っても、過言ではない。
告知によって頭の中が真っ白になるようなショックを受け、「どうして自分だけが」と怒りや不安に悩んでも、半月もすれば支障なく日常生活が送れるぐらい落ち着く人が多い。このときに、主治医を信頼してみようという気が起こるかどうかがカギだ。信頼してもらえれば、共にがんと闘う方法を考えて実行することができる。
●頼りたくなるか
ただ、いくら落ち着いたとはいえ「あなたはがん。すぐ手術しないと命を失うかもしれません」と言い放った医者を頼りたくなるだろうか。冷たいと不信感を抱くのが人間ではなかろうか。
医師にもメンタルケアの勉強は必要だろう。同時に、告知を受けた後の患者ががんであることを受け入れるまでそれぞれの段階に応じたカウンセリングが必要だが、まだ不十分なのが北陸の実情だ。専門家が増えることを強く望む。
まい・まさよし=伊藤病院・内視鏡センター長・副院長、金大名誉教授
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