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医療記事特集
がん最前線

〔スキルス胃がん(2)〕 「治る」の信念が薬に 克服した人もいる
北國新聞(朝刊)2007年07月02日付

 スキルス胃がんが難治性と言われるのは、内視鏡で確認できる胃の粘膜面の病巣がまだ小さくても、胃の粘膜下層より深い部分まで入り込み、一気に広がるためである。中でも妊娠中は増殖が盛んになるため、見る見るうちにがんが増大する。

 若い人に多いがんである。発見して手術しても、力及ばずとなるケースは少なくない。

切ない高校生の輸液

 私が担当した中で最も若い胃がん患者は残念な結果に終わっている。まだ高校生で、一カ月ほど前から空腹時に吐き気とみぞおちの痛みを感じていた。スキルス胃がんであり、抗がん剤を投与したがほとんど効果はなかったため、胃を全摘出した。

 がんが浸潤(しんじゅん)した胃は、通常の半分ほどに縮み、広い範囲のリンパ節に転移していたため、手術後も抗がん剤を投与し、翌春高校に復帰。食事が十分とれなかったため、高カロリー液を詰めた特殊なランドセルを背負って一カ月ほど通学した。

 これほどまで頑張ったのだが、残念ながら発病からちょうど一年後に亡くなった。

 生に対する患者の強い思い。それに応えられないむなしさ、悔しさ。輸液ランドセルを背負って学校に通う患者の姿は今も忘れられない。

 しかし、前回にもご紹介したように難治性ということは治らないということではない。

 三十代半ばの女性は、ある日おなかに小さなしこりがあることに気づいて私を訪ねてきた。特に痛みはなかったが、強いて言えば、最近やせてきたような気がするという。

 血液検査では、がんがあることを示す腫瘍(しゅよう)マーカーの値がかなり高く、がんを疑うだけの根拠があった。胃のレントゲンと内視鏡検査では、粘膜下腫瘍を疑われる隆起があり、その周囲の粘膜ひだが厚くなっていた。生検を行ったところ、低分化腺がんと分かった。

術後に抗がん剤

 術後、手術標本を詳細に調べたところ、がんは既に胃壁深くに浸潤し、スキルスの形態を呈していた。リンパ節にも一部に転移が認められたが、切除できる範囲だった。そのため、病巣部とリンパ節を手術によって取り除いた後、長期にわたり経口抗がん剤を投与した。結果として、この女性は手術後三十年近く経った今も再発することもなく、元気に過ごしている。

 生存率はあくまでも平均値だ。治ることを目指して治療することが、何よりの薬となる。



 まい・まさよし=伊藤病院・内視鏡センター長・副院長、金大名誉教授



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