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医療記事特集
がん最前線

〔内視鏡の歴史〕 口から飲むカプセル型登場 大道芸人の協力で進歩
北國新聞(朝刊)2007年12月03日付

 先日、ロシア内視鏡学会から招かれてモスクワに一週間滞在した。十一年前、ウラジオストクなど二都市に内視鏡研修センターを開設するときにかかわって以来、毎年ロシアで技術などを指導している。今年はロシア内視鏡学会から、内視鏡の過去と現在、未来について話してほしいと依頼された。その内容をかいつまんで紹介したい。

 内視鏡の歴史は古い。身体の内部を直接観察して診療に役立てようという試みは、紀元前から行われてきた。例えば紀元前四世紀、乗馬が盛んだったため痔(じ)に悩む人が多かったことから、開閉式の肛門鏡で治療が行われた。

「魔法のランプ」

 管を通して体内に光を導き、生体内の観察をするという現在の内視鏡の原型は、十九世紀初めにドイツのボッチニーによって作られた。ろうそくの光を管で誘導し直腸や食道などを見た。しかし、当時のウィーン大医学部はボッチニーの開発した器具をおもちゃとし、「人体をうかがう魔法のランプ。神をぼうとくするもの」と決めつけた。そのため、ボッチニーは研究を中断せざるを得なかった。

 内視鏡が進化するためには、安定した光と、安全な管の開発が必要だった。光はエジソンの電球実用化後、日進月歩で進んできた。管の発展は、大道芸人の協力から始まった。

 十九世紀後半、ドイツのフライブルグ大のクスマール教授は真っすぐな長い胃鏡を、剣をのむ芸を披露する芸人にのませ、世界で初めて胃の内部を観察した。それが二十世紀半ばに硬性胃鏡、胃カメラとなり、ファイバースコープ、電子スコープへと発展した。

 最新の品は、二〇〇〇年に登場したカプセル型内視鏡で、内服薬のように口から飲み込む。幅十一ミリ、長さ二十六ミリのカプセルを一回飲めば、七万五千枚以上の静止画像が撮影できる。

米国で17万件の検査

 米国では、既にこのカプセル内視鏡を使って十七万件以上の検査が行われている。日本製の品も近々発売されるという。ただし現時点では、価格や扱いやすさなどから考えると胃や大腸の観察は従来の内視鏡のほうが向いていると思う。カプセル内視鏡は小腸の観察に力を発揮しそうだ。

 このようなことを述べたロシアの学会だった。閉会式にボリス・ポドゥブニー学会長から思いがけず特別功労賞の盾と記念メダルをちょうだいした。誠に栄誉なことであった。

 まい・まさよし=伊藤病院・内視鏡センター長・副院長、金大名誉教授



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