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第70部・昔の常識、今の非常識

(2273)水泳後の洗眼 目の表面、傷つける恐れ 点眼薬やゴーグル使用を
北國新聞(朝刊)2018年09月02日付

目の表明の構造を説明する山下助教=金大附属病院
 子どものころ、プールで泳いだ後、こう言われなかっただろうか。「シャワーとともに、目をしっかり洗うように」。しかし最近、洗眼は疑問視されるようになっている。水泳後の洗眼をはじめ必要以上に目を洗うことは、表面を傷つける恐れがあるからだ。

塩素、敏感にならず

 「必要のない洗眼は百害とまでは言わないが、『九十九害あって一利』でしょう」。金大附属病院眼科の山下陽子助教は管理されたプールなら、洗眼の必要はないとする。

 プール後の洗眼は異物や微生物、塩素を流す効果が期待できるとされる。ただ、山下助教によると、学校のプールであれば、雑菌や塩素に過度に敏感になる必要はない。

 そもそもプールは塩素で雑菌が抑制されている。プールの塩素の濃度は1g当たり0・4〜1・0_cで、0・1_c以上とされる水道水と比べれば高いが、山下助教は「一日中入っているのでなければ、目に大きな影響はない」とする。仮にプールの塩素を目から洗い流したくても、水道水では意味がない。

 山下助教は「心配なら点眼薬をさすか、目全体を保護する意味でゴーグルを掛けるほうがいい」とする。では、洗眼によるリスクは何か。

 懸念されるのは、蛇口から勢いよく吹き出す水やこすりつけるように洗うことで、目の表面が傷つくことだ。

 目の表面には、角膜を保護するため、粘液の一種の「ムチン層」がある。この層はムチン層よりさらに外側の涙液(るいえき)層を保つ役割も果たしている。過度の洗眼はムチン層、涙液層を少なくし、角膜をむき出しにする可能性がある。

 同じように角膜がむき出しになり、これが恒常的になってしまうのが「ドライアイ」だ。目の疲れや不快感、痛みが続き、進行すると視力の低下なども招く。山下助教は過度の洗眼をきっかけにドライアイを発症するとは考えにくいとするものの、「不必要な洗眼は避けるべき」と話す。

 もっとも、どんな所で泳いでも全く気にしなくてもいいというわけではない。プールはともかく、海や川で泳ぐようなことがあれば、対策を取る必要も出てくる。ただ、この際も水道水による洗眼ではなく、山下助教は「点眼薬を使うのがベター」と話す。

半世紀前の治療法

 洗眼を巡る「昔の常識、今の非常識」では、眼科医の洗眼にも変化がある。50年ほど前まで「結膜炎」を発症した際に洗眼そのものが治療として行われていたが、現在これを行う眼科医はほぼいない。

 というのも、当時は治療薬の種類が乏しく、細菌やウイルスが原因の結膜炎の対策は、まず目を清潔に保つことが有効と考えられたからだ。このため、街の眼科では、もっぱら洗眼をしていた。年配の患者にはこの経験があるのか、山下助教も以前「昔とちごうて、最近の目医者は目を洗ってくれん」と声を掛けられることがあったそうだ。

 現在、細菌性の結膜炎は抗生物質の入った点眼薬、ウイルス性の場合には自然治癒を促すため抗炎症剤入りの点眼薬を用いる。ただし、事故などで目に液状の劇薬や異物が入った際には生理的食塩水を使って洗眼を行う。

 「一般家庭では、不必要な洗眼は行わないでほしい」と念を押す山下助教。「昔は常識だったから」と妄信することこそ良くない。



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