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第82部・口は災いのもと

(2482)全身へ飛び火(上) 虫歯が心不全を招く 歯茎から細菌が侵入
北國新聞(朝刊)2020年09月05日付

患者を診察する加藤准教授。「口の中の健康を保つことは全身の健康につながる」と話す=金大附属病院
 「心臓の動きが弱くなっています」。金沢市内の高齢男性は自宅で急な胸の痛みに襲われ、金大附属病院に搬送された。救急隊員から患者の容態を聞きながら、心臓外科医が全身をくまなく調べる。かなり危険な状態である。

 いったい何が原因なのか。男性の口の中を確認するやいなや、医師は看護師に指示した。「歯科の先生を急いで呼んでくれ」

緊急手術で救命

 一刻を争う緊急局面で、なぜ歯科の出番なのだろうか。実は心臓と口には密接な関係があるのだ。

 「心内膜炎の疑いがある。どう思う?」。心臓外科医の見立てに、駆け付けた歯科口腔(こうくう)外科医も「歯の状態がひどい。ほとんど治療を受けていませんね。確かに心内膜炎の恐れがあります」とうなずく。

 感染性心内膜炎は、心臓内にある弁や心臓の壁に細菌が付着して炎症を起こす病気で、発熱や胸の痛み、呼吸難、冷や汗など心不全の諸症状が現れる。

 男性は緊急手術を受けることになった。「もう1回、発作が起きても大変だから、まずは抜歯からお願いしたい」。かなり悪化した虫歯を歯科医が抜き、続けざまに胸を切開して心臓の中にある細菌の塊を除去するとともに、感染で傷んだ弁を修復する。素早い外科処置により、男性は一命を取り留めた。

 金大附属病院歯科口腔外科の加藤広禄准教授は「しょっちゅうではありませんが、救急体制のある病院で働く歯科医なら、こんな場面に遭遇する経験は意外とあります」と話す。

 男性の心臓で感染を引き起こした細菌の出所は口である。虫歯や歯周病があると、歯茎や歯の根っこの傷んだ部分から細菌が血管に侵入し、血流に乗って全身へ広がってしまう。やがて心臓へたどり着き、先の男性のように心不全を起こすことがあるのだ。

 最悪のケースでは細菌の塊が血管に詰まって血流が途絶え、塞栓症(そくせんしょう)となる。詰まった箇所が頭なら脳梗塞、肺なら肺塞栓症と、いずれも身体に重大なダメージを及ぼす恐れがある。

高齢化でリスク増

 こうした細菌感染に端を発する病気は、心臓に人工弁が入っていたり、透析を受けていたり、糖尿病を患ったりしていると危険が高まる。引き金となるのが口腔の健康、特に歯の状態の悪さだ。いずれも加齢によってリスクが増大するため、高齢化の進展に伴って一層の注意を払う必要があるといえる。

 近年は、悪化した口内環境と、脳卒中や心筋梗塞との関連を指摘する研究も進み、加藤准教授は「まだ研究段階ではあるが、口の中の健康を保つことで、これらの病気のリスクを下げられるかもしれない」と展望する。

 「口は災いのもと」。これは単なる慣用句ではなく、超高齢化時代の健康維持に重要な意味を持つ警句なのだ。

   

 歯や歯茎、舌など口の健康を損ねると、思わぬ病気に見舞われることがある。第82部では、口が引き起こす、さまざまなトラブルや最新の治療法を紹介する。



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