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第82部・口は災いのもと

(2484)全身へ飛び火(下) 顎の骨が細菌で壊死 骨粗しょう症治療があだに
北國新聞(朝刊)2020年09月12日付

 口のトラブルを抱えていると、本来は効果的な治療薬がマイナスに働くこともある。

 金沢市内の70代女性は、うずくような顎の痛みに耐えかねて近所の歯科医院に駆け込んだ。長らくほったらかしにしていた虫歯のせいだろうか。診察した歯科医は、女性の懸念をはるかに上回る深刻な病状を告げた。

 「顎骨壊死(がっこつえし)の疑いがありますね。端的に言えば、顎の骨が腐っています」

 もはや歯科医院では手に負えず、女性は金大附属病院で治療を受けることになった。

歯から顎へ侵入

 顎骨壊死を招いた主因は、女性も自覚していた通り、虫歯の放置にある。そこから歯周病となり、口腔内で繁殖した菌は歯とつながる顎の骨へと侵入、炎症を起こしていた。さらに事態を悪化させたのが、女性が服用していた骨粗しょう症の薬である。

 体内では日々、古くなった骨を壊して、新たな骨を作る作業が行われている。皮膚などと同じく新陳代謝を繰り返しているのだ。

 解体作業員に当たる「破骨(はこつ)細胞」と、建設作業員である「骨芽(こつが)細胞」の仕事量が釣り合っているうちは問題ないが、年を取るとバランスが崩れ、骨芽細胞の働きが弱くなる。すると、解体ばかりが進んで建設が間に合わず、骨が弱くなってしまう。影響は口の中にも現れ、歯を支える土台の骨「歯槽骨(しそうこつ)」がもろくなると歯が抜けることもある。

 こうした骨粗しょう症の状態を改善するために、よく用いられるのが、解体役の破骨細胞にブレーキをかける「ビスホスホネート系薬剤」だ。この薬と歯周病がセットになると、先の女性のように顎骨壊死を引き起こすリスクが高まることが知られている。

 同病院歯科口腔(こうくう)外科の加藤広禄准教授は、再生が行われず古くなった骨は菌などの「外敵」に弱いとした上で、「骨粗しょう症の治療薬は骨の新陳代謝を抑えるため、結果として骨が感染症に弱くなってしまう。太ももの骨や背骨は筋肉や皮膚に守られているが、顎は薄い粘膜に覆われているだけなので細菌が侵入しやすい」と説明する。

 この女性は数年前から骨粗しょう症の服薬治療を続けており、その間、骨折することもなく、一定の治療効果が認められていた。一方で、顎の骨だけは本人も気づかないうちに、じわじわと崩壊していたのである。歯科治療を怠ったせいで起きた悲劇だ。

歯周病菌を排除

 顎骨壊死の患者に対し、金大附属病院では、まず口内を消毒、洗浄して歯周病菌を排除し、症状の進行を抑えた上で、無事な部分の顎の骨を温存する方法を取ることが多い。ただ、状態が悪ければ、手術で顎の骨の切除が必要になる場合もあるという。

 顎骨壊死は、入れ歯の人でも粘膜の傷から感染を起こして発症することがある。加藤准教授は「『年やから、もういいわ』と思わずに、高齢者こそ定期的に歯科医院へ通うことが大切です」と強調する。

 年齢とともに増える骨粗しょう症は、女性では60代の3人に1人、70代の2人に1人が罹患(りかん)しているとされる。寝たきりになるような重大な骨折を避け、かつ顎の骨も守るために、こまめな歯科通院に「骨を折る」のが得策だ。



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