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母乳にビフィズス菌増やす酵素 石川県立大の片山講師グループが発見 「母乳の子は強い」を証明 より自然に近い粉ミルクの開発へ
2006/10/01 北國新聞 朝刊

 母乳を飲む赤ちゃんのおなかでビフィズス菌が増えるのは、母乳中の特定の酵素が関与していることを石川県立大生物資源工学研究所応用微生物工学研究室の片山高嶺講師グループが突き止めた。母乳で育つ赤ちゃんは病気に強いと俗に言われるが、その仕組みを分子レベルで世界に先駆けて解明した。同グループはこの酵素を生かし、食品総合研究所(茨城県つくば市)と共同で、より母乳に近い人工粉ミルクの開発に乗り出した。
 大腸の中には大腸菌などの悪玉菌と、ビフィズス菌などの善玉菌が共存する。
 ビフィズス菌は一八九九年、母乳で育てられた赤ちゃんの便から発見された。その後、細菌による下痢や便秘を防いだり、免疫力を高めるなど健康維持に欠かせない驚くべき作用が分かった。
 母乳を飲む生後一カ月の赤ちゃんの腸内は大腸菌などが少なく、九割以上がビフィズス菌で占められている。増殖の要因として母乳に含まれるオリゴ糖の存在が考えられていたが、その仕組みは解明されていなかった。
 片山講師はビフィズス菌の研究を進める中で、母乳中のオリゴ糖の主成分「フコシルラクトース」に着目。赤ちゃんの腸内に存在する善玉菌の中でも、ビフィズス菌だけがその成分を栄養にし
ていることを突き止め、成分の分解に関与している「フコシダーゼ」という酵素を発見した。
 この酵素の働きによって赤ちゃんの腸内にビフィズス菌が増殖し、悪玉菌が増えるのを防いで善玉菌の比率を高めるメカニズムも判明した。
 片山講師はこの酵素の遺伝子解読にも成功。食品総合研究所との共同開発では、これまで以上にビフィズス菌を増やすような人工ミルクを目指している。
 片山講師は「有用なビフィズス菌を優先的に増やす人体の仕組みに改めて驚かされた。今後は授乳に悩むお母さんたちを助けられるような人工ミルクを完成させたい」と話す。
 腸内のビフィズス菌は老化とともに減少するため、片山講師はそれを増やすような薬剤開発にもつながる可能性があるとしている。

●産業的にも重要、微生物に詳しい農学博士の横関健三京大客員教授
 今回の研究はビフィズス菌がなぜ人間の腸内に常在できるのかという根本的な謎を解き明かす一助になると期待される。母乳中のオリゴ糖を分解するフコシダーゼの働きを逆に利用すれば、母乳中のオリゴ糖を人工的に作り出すことも可能だ。片山講師の発見は学問的見地からも、産業的見地からも極めて重要といえる。

★〔ビフィズス菌(びふぃずすきん)〕
 生き物の腸内に存在する善玉菌の代表で、乳酸菌の一つ。▽乳酸や酢酸を生成し腸内を酸性に傾けることで病原菌感染から体を守る▽腸のぜん動運動を促し便秘を防止する▽細菌性下痢の予防と治療▽体の免疫力増進―などの働きがある。腸の調子を整える善玉菌として、ビフィズス菌を含むさまざまな乳製品が販売されている。



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